今日は、作家向けのお話です。
「物語の1ページ目には何を書けばいいのか」というお話です。
最初の1ページで、その物語の面白さが分かる
よく、ベテランの漫画雑誌編集者とかが「投稿漫画の面白さは、最初の1ページを見たらだいたい分かる」って言うじゃないですか。
私もまさにそう感じていて、1ページ目でその作家さんのプロットスキルが大いに出ると思ってるんですよ。
まあ、一流の作家とかヨーロッパ系のアーティストはあえてそれを外すこともありますが、ディズニーとかハリウッドみたいな、特にアメリカ系のメジャーは、まず最初の1ページを「基本から外す」ことはありません。
じゃあ、1ページ目に何が書かれているのか。
1ページ目に何を書けば、「投稿の1ページ目」という試練をクリアできるのか。
もうまどろっこしい理屈は抜きにして、結論から言いましょう。
最初の1ページ目には、「その物語における『問題』が描かれている」ということです。
物語とは、「主人公が問題を解決する過程」
物語というのは、一言で言うと「主人公が問題を解決する過程」だと言えます。
で、最初の1ページでは、その物語では何が問題なのかが描かれているわけですね。
恋愛物語なら、恋人がいなくて落ち込んでいる主人公の姿が描かれるかもしれません。
また、恋ができない主人公の性格的な欠点、もしくは身体的な欠点が描かれるかもしれません。
バトルものなら、そのバトルで勝った人はどんな栄光をつかめるのか、それが示されるかもしれません。
そして、バトルで勝てない主人公の身体的欠点、もしくは性格的欠点が描かれるかもしれません。
サスペンスなら、主人公の「幸せな姿」と、「その幸せが奪われる予感」が描かれるかもしれません。
幸せすぎるからこそ、それを敵に奪われるのが怖くなるわけですね。
この「問題」が、物語の軸になるわけです。
ちょっと専門的な用語で言うと、「メインプロットの対立関係を象徴するもの」となります。
そういう物語の主軸が1ページ目で明快になっているほど、洗練されたプロットであり、洗練された物語であると言えます。
いい冒頭のお手本
今日、ツタヤでいろいろ漫画を借りてきた中で、これの手本となるようないい出だしの漫画を見つけたので、ご紹介しましょう。
まあ見ての通り普通の少女漫画なんですが、もう冒頭1ページ目でだいたいの方向性が分かって、冒頭3ページ目まででメインプロットの内容全てが描ききられています。
1ページ目で、「恋愛相手はくそ生意気な青年」だと紹介されていて、主人公はそんな青年相手に、いらついている姿が描かれていると。
これがまさに、メインプロットの対立関係すべてを象徴している、ワンシーンなわけですね。
で、3ページ目までで、主人公が抱える性格的な問題が示されています。
2ページ目では、「主人公は、初対面の青年に胸を触られても、眉をぴくりとも動かさないようなほどの、生意気さに動じない性格」だと。
で、3ページ目では、そんな性格になってしまった生い立ちがざざっと説明されています。
これだけの情報があれば、「ああ、主人公がこれから、年下で生意気な青年と付き合うことで、動じない性格なはずなのに、少しずつ動揺していくんだな」って期待できますよね。
まさに、メインプロットの対立関係が象徴されて、描かれていると。
冒頭では、「物語の主軸が描かれているか」が大切
これは、ただキャラクター紹介をすればいいとか、世界観説明をすればいいとか、そういう次元ではないんですよ。
物語の主軸だけを、端的に示すことができているか、ということです。
もう少し表現を変えると、物語のテーマが描けているかどうか、ということです。
テーマとは、「○○という問題を抱えた主人公が、△△を通して、その問題を解決する物語」だと表現できます。
上記の「なまいきざかり。」のテーマは、「『感情を我慢する』という問題を抱えた主人公の少女が、年下で生意気な青年と付き合うことを通して、その問題を解決してゆく物語」だと言えます。
まさに、冒頭3ページでそのテーマが描かれていますよね。
そして冒頭1ページでは、それを象徴するワンシーンが描かれていると。
これは、ちゃんと全体の筋を見通せていなければ、作れない冒頭です。
すなわち、冒頭1ページで、その作家が「全体の筋を通すだけの能力があるかどうか」というのを見分けることができる、ということですね。
メインプロットをしっかり構成できる人でなければ、1ページ目を魅力的に演出できないんですから。
私が書いている「ストーリー作家のネタ帳」シリーズでも、「このイベントでは、冒頭ではこういう内容を書きなさい」って示していますよね。
それは、そのプロットなら、必然的にそういう冒頭になるんですよ。
勘のいい人なら、既に「冒頭には何らかのパターンや共通法則があるな」と見抜けているかもしれません。
まさにその「冒頭のパターン」のことです。
まとめ
そんな風に、冒頭では「その物語における『問題』を描くといい」ということですね。
専門的な用語で言うと、「メインプロットの対立関係を象徴する場面」になります。
この冒頭を作れれば、まず「冒頭で外す」ことはありません。
すなわち、これが冒頭の基本なんだと。
これは入門者ほど外しがちで、ディズニーとか一流映画になればなるほど、基本通りに行います。
これが分かれば、冒頭で悩むことはなくなるでしょうし、適切な冒頭を作れるでしょう。
また、そういう意識でいろんな作品の冒頭を見てみるといいでしょう。
特にハリウッド映画を見れば、1ページは1分に該当するので、「最初の1分と最初の5分で、物語の全体が分かるように構成されている」と気づくでしょう。
ってことで、今日は「物語の1ページ目には何を書けばいいのか」というお話をしてみました。
今日はここまで~。