今日は作家向けのお話です。

「キャラ設定から物語を作る方法」ということで、お話ししてみましょう。

今回は、入門者向けです。(たぶん)

 

紙面デビューって、嬉しいですよね

うちでよく作家向け本のチェックやらでお手伝いしてくださっている方で、隣の飼いケルベロスさんというお方がいるんですよ。

以前から漫画を描いてオンラインで公開していて、「今回の教材は勉強になりました!」とか、「ついに担当編集がつきました!」みたいにご連絡いただいていたんですが。

で、今回ついに、月刊少年ガンガンで紙面デビューということで、喜びとともに連絡をもらったり。

いや~、技術を提供している側からすると、こういうのは嬉しいですよね。

おめでとうございます。

 

実際の作品は、ガンガンオンラインでも閲覧できます。(公開は2016年6月10日まで)

「勝ち抜き4コママンガバトル」という企画で、6人の新人漫画家さんが2ページずつ描いている四コマ漫画企画ですね。

その中の、「古城さんはこじらせガール」という作品です。

感想や内容についてはまた後ほど。

 

このケルベロス先生にしろ、うちでイラストを描いてくださった漫画家の晴十ナツメグ先生にしろ、大きな共通点としては「学び好き」ってのがあるように思います。

二人とも、全くの無名時代からやりとりをしていたんですが、当時から学ぶの大好きでしたからね。

まぁうちの教材まで手を出す時点で、相当学び好きのような気もしますが(笑

 

そういう人は着実に成長していくので、いつかは成果を出すものなんですよね。

だから私も、安心して「この人は大丈夫だな。夢を実現していくタイプの人だな」と見ていられると。

このページで学んでいる方も、そういう風に、夢を着実に実現していくタイプが多いと思います。

 

「物語を意味次元でとらえる」とはどういうことなのか

で、このケルベロス先生が、今回こんな風に、印象深いことを言っていたんですよ。

やはり中村さんのストーリー論が、ジワジワ効いてきている感じがします。
特に「物語を意味次元で捉える」ということが、だんだん分かってきた気がしています。

ストーリーの面白さというのは、「外側」ではなく「意味」なんでしょうね。

おそらく、この記事(「テーマのない作品にテーマを作るとはどういうことなのか、実際にやってみた」)の内容だろうと思いますが。

 

まさにそうで、この「物語を意味次元でとらえる」ことができれば、物語はぐっと面白くできます

これは特に、キャラクター設定を先に作るストーリー作家さんほど、効果を発揮することでしょう。

 

じゃあ、「物語を意味次元でとらえる」とはどういうことなのか、ってことですよね。

物語を作る場合、場面を先に作ったり、キャラ設定を先に作ったり、構造を先に作ったりと、いろんな作り方があります。

そんなとき、キャラ設定を先に作ると、入門者ほど「キャラ設定だけで強引に話を作ろうする」という失敗をやりがちです。

すなわち、キャラ設定だけ作って、物語になっていない、ということですね。

 

これはどういうことかを、今回の「勝ち抜き4コママンガバトル」の作品から、二つの例で見てみましょう。

 

「瀬名くんはエロ本に守られている」の問題点

一つ目は、一番最初の「瀬名くんはエロ本に守られている」(天栗めし子先生の作品)という4コマ作品です。(2016年6月10日までなら、こちらで実際の作品を閲覧できます

簡単に内容を言うと、ツッコミ役の染谷君は、新学期に新しいクラスになって、隣の席の主人公、瀬名君と出会います。

で、その瀬名君は堂々とエロ本を読んでいるんですが、その使い方が奇抜だと。

エロ本を少女漫画を隠すために使ったり、ボールを受け止めるために使ったり、傘代わりに使ったりすると。

で、それぞれ「そういう使い方をするのかよ!」ってことでツッコミを入れて、笑いを取る、という形で終わらせています。

 

これがまさに、キャラ設定だけで、物語にまで作りきれていない典型例ですね。

笑いの取り方は十分に面白いんですが、そこにはキャラ設定しかないんですよね。

「瀬名君はエロ本を堂々と持っている」、「奇抜な使い方をする」という、キャラ設定だけです。

 

物語というのは、変化を描くものです。

別の言い方をすると、テーマを持つ、ということです。

テーマとは、「○○という問題を抱えた主人公が、△△を通して、その問題を解決する」という内容のことです。

「堂々とエロ本を持っている」とか「奇抜な使い方をする」では、主人公が抱える問題もありませんし、変化もないですよね。

 

じゃあ、そこにテーマを追加して、物語にしましょうと。

そのために、「意味次元でとらえる」という作業を行います。

 

「なぜその設定なのか?」を追加する

なら、そもそもなぜ主人公の瀬名君が「エロ本を持つ」という必要があるんでしょうか?

現状では全くの無意味ですよね。

エロ本を持つ意味がないんですよ。

読み手は意味がない作品を「つまらない」と思いますし、意味があればあるほど「面白い」と感じます。

 

ならば、そこに意味を追加してみましょう。

「なぜエロ本を堂々と持つのか?」という理由を考えてみると、例えば「主人公の瀬名君は、女っぽいと馬鹿にされている。だから『自分は男だ』と周囲に示すために、堂々とエロ本を見せている」とか考えられますよね。

すると、エロ本を持つことに意味が生まれます。

この場合、テーマは「『女っぽい』という問題を抱えた主人公が、染谷君との交流を通して、その問題を解決する物語」とできるでしょう。

 

他にも、エロ本を持つ理由として、「片思いの女の子を守りたかったけど、守れなかった。だからエロ本で(偏った)知識やスキルを身につけようとしている」という意味を追加できるかもしれません。

すると、テーマは「片思いの子を助けられない臆病な主人公が、染谷君との交流を通して、その問題を解決する物語」とできるでしょう。

 

物語の構成

なら、物語は次のような構成にできます。

今回は、前者を元に物語(メインプロット)を作ってみましょう。(「エロ本の奇抜な使い方」という設定は、ここでは削除しています。理由は後述します)
  • 第一幕
    • 主人公の瀬名君は、片思いの子から「女っぽい」と言われた。それをコンプレックスとして持っているので、堂々とエロ本を広げて、周囲に「自分は男だ」と誇示している。
    • そんなあるとき、主人公は男らしい染谷君と出会う。
    • 最初は男らしい染谷君に嫉妬して拒絶するけど、主人公は染谷君と友達になることで、自分も男らしくなれると知る。
    • そして主人公は、「彼女ができるまでは、協力してやる」と染谷君から受け入れられることで、「染谷君から教わることで、男らしくなる!」と決意する。
  • 第二幕前半
    • 主人公は「片思いの女の子に告白する」という目標を設定して、それに向けて二人は動いていく。
    • 主人公はエロ本知識を元にした「男らしさ」で行動する。それを染谷君に突っ込まれる、という掛け合いで進めていく。
    • 主人公は少しずつ、エロ本知識ではなく、普通の「男らしさ」を無意識に発揮していく。(本人は自分にそんな魅力があるとは気づいていない)
    • 主人公は片思いの子から、少しずつ好意を持たれていく。同時に、染谷君とも絆を深めていく。
  • 第二幕後半
    • ついに主人公は、片思いの子への告白を前にする。
    • 主人公は染谷君と最後の時間を過ごして、「一緒にいられてよかった」と受け入れる。二人は親友だけど、主人公に恋人ができたら、主人公は染谷君とは別れる約束になっている。
    • そしてついに告白しようとするが、想定外の事態が発生して、エロ本知識が出て、失敗してしまう。
  • 第三幕
    • 「まだ嫌われたわけじゃない」と、主人公は一時の猶予を得る。そして挽回の方法があると示される。
    • 最後の最後で主人公は「女っぽくていい。それより彼女を守りたい(もしくは染谷君の努力を無駄にしたくない)」という出来事が起こって、エロ本を手放して、ありのままの「格好悪い自分」で告白を成し遂げる。
    • 後は、告白に成功しようが失敗しようが、「女っぽい」という心理的な問題を解決した日常が描かれて、ハッピーエンドへと導かれる。(振られて染谷君と居続ける方が、流れとしてはいいかも)
 

……と、こんな感じの物語(メインプロット)を作れます。

このプロット構成は、「ストーリー作家のネタ帳」第1巻の「好きになる」を参考にすると作れるでしょう。

恋愛メインにしたければ、女の子との絆を深める方をメインにして、友情や掛け合いをメインにしたければ、染谷君との絆をメインにするといいでしょう。

 

実際の4コマ漫画に落とし込む

すると、今回の4コマバトルの漫画投稿形式では、次のような構成で投稿できるでしょう。
  • 1~4コマ目:
    • 主人公(瀬名君)の紹介と、舞台が学校であることを示す。
    • 片思いの子から「女っぽい」と言われて、落ち込んだことの回想。
    • 「だけど、ついに男らしく見せる方法を知った」という前振り。
    • で、エロ本を堂々と持っていて、「こうすれば男らしい!」と誇示していることを独り言で示す。同時にそれを、「違うだろ!」と隣の席の染谷君からツッコミを入れられる。
  • 5~8コマ目:
    • 主人公は、自分のコンプレックスを染谷君に知られてしまったことに気づき、うろたえる。
    • 相方となる染谷君の紹介。主人公は、「こいつ(染谷君)は男らしくて女の子からモテて、僕の最も嫌いなタイプだ」と内面描写で示す。
    • 染谷君は主人公に、「男らしくするにはあーだこーだ」と言うが、主人公は「エロ本は自分のバイブルだ。こいつは自分を陥れようとしている」と誤解して、拒絶する。
    • そして「そんなことはない、このバイブルはこんなに素晴らしい」と再び極端なエロ本知識を披露して、染谷君から「違うだろ!」とツッコミを入れられる。
  • 9~12コマ目:
    • 主人公はあるとき、周囲の男子が次々と「染谷君のアドバイスで、意中の子とつきあえるようになった」という事実を知る。
    • 主人公は、「悔しいが、バイブル(エロ本)よりも染谷君の方がすごい」と認めざるを得なくなる。
    • 主人公は染谷君と友達になりたくなるが、でも、素直に「友達になりたい」と伝えられない。
    • そして再び極端なエロ本知識で、染谷君に「友達になりたい」と伝えて、「違うだろ!」とツッコミを入れられる。
  • 13~16コマ目:
    • 染谷君は、「残念だが、主人公はもう手遅れだ」と見放そうとする。
    • 主人公は涙をぽろぽろと流して、「女っぽい」というコンプレックスを告白して、「染谷君のように男らしくなりたい」と語る。
    • 染谷君は主人公の気持ちに触れて、「仕方ない。お前に彼女ができるまで、手伝ってやる」と、友達になることと、男らしさの指南をすることを受け入れる。同時に感激する主人公。
    • 主人公は喜んで、再び極端なエロ本知識で感謝&お礼をして、染谷君から「違うだろ!」とツッコミを入れられる。
 

設定を物語に生かす

これでメインプロットの第一幕を示したことになりますが、ちゃんと物語になってますよね。

こうすることで、「エロ本を持つ」ということに意味が生まれて、物語とキャラ設定がしっかりと統合することができます。

 

で、後はテーマである「『女っぽい』という問題を抱えた主人公が、染谷君との交流を通して、その問題を解決する物語」に合わせて、設定を突き詰めていきます。

「エロ本の奇抜な使い方」は扱いにくい設定だったので、ここではそれを「奇抜なエロ本知識」に変更することで、より文脈に合うようにしています。

主人公が「女っぽい」という設定なので、相方の染谷君は「男らしい」という設定にしてます。

そして、「極端なエロ本知識」で掛け合いをして、笑いを取っていく流れになります。

 

すると、設定に筋が通って、ちゃんと物語になってますよね。

設定だけの掛け合い4コマ漫画から、だいぶ物語として通用する内容になったんじゃないかと思います。

友情もの、というか少しBLっぽい構成ですかね。

 

今日のまとめ

こういう風に、「意味のある設定」を作るというのは、「テーマに即した設定にする」ということでもあります。

言い換えると、「テーマから適切な設定を生み出す」とも言えるでしょう。

これが、「物語を意味次元でとらえる」ということです。

 

設定の意味を考えることで、テーマを作り、物語へと昇華していくわけですね。

「瀬名くんはエロ本に守られている」は、ギャグの作り方や見せ方はとても素晴らしいんですよ。

なので作者の天栗先生は、この「物語にする」という点を意識すると、よりよい作品になるかと思います。

 

長くなったので、もう一つの改善例は、明日にするとしましょう。

今日はここまで~。