(作家向け)「自分なりの王道展開」を作る、物語の構成法(「クロクロク」の例)

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(作家向け)「自分なりの王道展開」を作る、物語の構成法(「クロクロク」の例)

今日は、最近恒例となっている作家向けのお話です。

「自分なりの王道展開」を作る、物語の構成法ということで、お話ししてみましょう。

なお、今回の記事は、以前に説明した「単発の物語を、連載形式にするテクニック(アルドノア・ゼロの例)」の別の具体例にもなります。

 

物語の冒頭から、「自分なりの王道展開」を作ることができる

私はプロット関連でいろいろやっているので、作家さんとやりとりをする機会も多いんですよ。

で、やっぱり「プロットがうまく作れない」っていう声はよく聞くんですよね。

「小さい場面なら作れるけど、全体の流れ(メインプロット)になると急に分からなくなる」とか。

「冒頭なら作れるけど、結末までの長丁場の展開をイメージできない」とか。

 

一方で、ワンパターンでも使い回しができる王道展開があると、便利じゃないですか。

例えば少年ジャンプ系の格闘漫画だって、「ドラゴンボール」にしろ「るろうに剣心」にしろ、「もっと強い敵が出てきて、倒す」みたいなパターンがあります。

それは同じ構成だけど、王道だから面白いんですよ。

むしろ、同じ構成だからこそ、「この作品らしい!」とファンが定着するとも言えます。

 

すなわち、「自分なりの王道展開」、もしくは「その作品なりの王道展開」があることで、全体の流れが見えなくても、話を展開しやすくなるわけです。

 

じゃあ、どうすればそういう「自分なりの王道展開」、「作品なりの王道展開」を作ることができるのか。

それが、以前にも説明した「単発の物語を、連載形式にするテクニック」を利用することですね。

これは「メインプロットを作れないけど、第1話なら作れる」みたいに小さい場面ならイメージできる方には、ぴったりの方法論になるかと思います。

 

漫画「クロクロク」の例

これはぐだぐだ説明するよりも、例で見た方が早いので、具体例で「その作品なりの王道展開」を作ってみましょう。

今回使う作品は、中村充志先生作の漫画「クロクロク」です。(第1話試し読みはこちら

 

内容はというと、悪い妖怪を退治するような、少年向けの格闘漫画……という皮を被った、恋愛物語です。(主人公が女の子なので)

主人公(遊佐千秋)は、東京多摩市に住む、高校生の少女です。

そんな主人公が、ある日ひょんなことから、多摩市役所の裏の仕事である「多摩市の妖怪管理」という仕事に携わることになってしまいます。

また、そこで上司である恋人役の青年(庵藤クロク)と出会います。

そして主人公は青年と一緒に、多摩の妖怪と触れていき、妖怪たちが抱える問題を解決していきます。

こうして主人公は、多摩と、そんな多摩を心から愛する青年を好きになってゆく……という、ちょっとローカル色がある恋愛物語です。

 

メインプロットは、「好きになる」(「ストーリー作家のネタ帳」第1巻収録)をベースとしています。

 

第1話とメインプロットを相似形にする

じゃあ実際に、この物語の第1話を元に、メインプロットと「この作品なりの王道展開」を作ってみましょう。

 

第1話は、だいたい次のような構成になっています。(メインプロットと異なる部分を、太字表記しています)

第1話:
  • 第一幕: 主人公が多摩市役所の妖怪管理部門と出会い、嫌々ながらもその仕事をせざるを得なくなる。
  • 第二幕前半: 市役所で青年と共に妖怪管理の仕事に触れてゆき、妖怪たちと仲良くなってゆく。そして市役所にいる妖怪たちと、そして青年と、絆を結んでゆく。主人公は忙しさにうんざりしつつも、次第にこの仕事を好きになってゆく。
  • 第二幕後半: 逃げてきた河童(かっぱ)の子を預かることをきっかけに、主人公たちは悪の河童から狙われてしまう。主人公は自らの意思で、嫌だったはずの仕事に向き合い、大好きな河童の子や妖怪たちを守ると決意する。同時に、青年の過去と事情を知る。
  • 第三幕: 青年は河童の子に脅威をもたらしていた悪の河童と戦う。そこで主人公が力添えをすることで、青年は勝利を得て平和を取り戻す。同時に主人公は、この仕事を愛して、仕事(バイト)を自発的に引き受ける。
 

じゃあ、メインプロットはその相似形で、次のようにできると分かります。

以下ではただ単純に、主人公と青年以外のキャラクターを置き換えて、規模を大きくしただけです。(太字部分が、修正している箇所になります)

メインプロット:
  • 第一幕(上記の第1話に相当): 主人公が多摩市役所の妖怪管理部門と出会い、その仕事を自発的に引き受ける。(一時的にバッドエンドにするために、以下を追加)だが、青年のデリカシーのなさに、この仕事に携わったことを後悔する。
  • 第二幕前半: 多摩市全体で青年と共に妖怪管理の仕事に触れてゆき、妖怪たちと仲良くなってゆく。そして多摩市と、多摩にいる妖怪たちと、そして青年と、絆を結んでゆく。主人公は忙しさにうんざりしつつも、次第にこの仕事を好きになってゆく。
  • 第二幕後半: 逃げてきた黄泉(よみ)の皇女を預かることをきっかけに、主人公たちは悪の妖怪組織から狙われてしまう。主人公は自らの意思で、嫌だったはずの仕事に向き合い、大好きな皇女や妖怪たちを守ると決意する。同時に、青年の過去と事情を知る。
  • 第三幕: 青年は皇女に脅威をもたらしていた悪の妖怪組織と戦う。そこで主人公が力添えをすることで、青年は勝利を得て平和を取り戻す。そして主人公は、多摩と青年を心から愛し、仕事(正職員)を引き受けて、結ばれてハッピーエンド。
 

もうほとんど相似形ですよね。

もしもっと大規模にしたい場合、「多摩市」を「東京全体」とか「日本全体」にしてゆくことで、対応できます。

これが、「この作品なりの王道展開」になります。

 

「クロクロク」メインプロット

実際に、メインプロットを再構成すると、以下のようにできるでしょう。(流れがよくなるように、第1話の構成も修正しています)

 
  • 第一幕(第1話):
    • (第1.1幕:日常) 世界観と、主人公が抱える問題を説明。
      • 主人公(遊佐千秋)は多摩市に住む、高校に通う普通の女子高生。しかし両親はおらずに、幼い妹と一緒に暮らしている。主人公のバイトだけで生活費を稼いでいるので、極貧の状態になる。だけど幼い妹の純粋な笑顔に救われることで、苦難も乗り越えられている。
    • (冒険への誘い) 主人公と妹は、借金取りによって家を追い出されてしまう。お金も住む場所も全てを失った主人公は、誰からも助けてもらえずに、途方に暮れる。
    • そんなとき、偶然にも「職員寮付き、まかないの食事付きで働ける」という、多摩市役所のアルバイト募集チラシを手にする。
    • わらにもすがる思いで面接の場(河童が出るような、普通の人は近づかない場所)に向かうと、突然妖怪である河童から襲われてしまう。それを、恋人役となる青年(庵藤クロク)に助けられる。
    • 青年から、「俺は多摩市役所の裏の仕事をしている。仕事内容は、多摩にいる妖怪の管理をすることだ」と仕事の紹介をされる。そして主人公は、青年から「妖怪が見えるということは、適性ありで採用だ!」と言われて、無理矢理採用されてしまう。
    • (拒絶) 主人公は、「こんな非日常で危険な仕事なんて、ありえない!」と、その仕事を拒絶する。
    • (メンター) ここで主人公が抱える問題と、状況の整理をする。主人公は極貧の状態で、妹と一緒に家を追い出されてしまったこと。他に行く当てもなく、このままではホームレスになり、飢え死にしてしまうこと。
    • しかし、ここで都合のいいアルバイトを見つけたこと。それは多摩市役所の裏の仕事である、妖怪の管理をすること。この仕事につけば、給料は少ないけれども、職員寮に入れるし、食いつなぐことができること。
    • だが、妖怪管理の仕事は非日常そのもので、しかも明らかに危険そうな内容になる。だから主人公は拒絶して、他の仕事を探そうとする。
    • (第一関門) 主人公は他の仕事を見つけることができずに、ついに夜を迎える。そこで主人公は、妹が主人公のために今までの小遣いを貯めていたことを知る。それは微々たる額だが、どれだけ妹が主人公のために我慢をしていたのか、その愛情を知る。そして、「お姉ちゃんと一緒にいられるなら、どんなにつらい場所でもいい」と言われる。
    • 主人公はそんな愛情に触れて、「大切な妹を助けたい。自分にできることなら、何でもしたい」と願う。結果として、多摩市役所の妖怪管理課でアルバイトをすることを受け入れる。
    • (第1.2幕前半) 主人公が市役所で仕事をする、新たな日々が描かれる。そこで主人公は、意外にもこの仕事が向いていると判明してゆく。
    • 過去のバイト経験によって、書類作業がすんなりできる。面倒見がよくて人づきあいもできるので、妖怪たちから好かれてゆく。次第に主人公は、市役所の妖怪管理部門では最も頼れる存在になってゆく。
    • その過程で、主人公は上司でもある青年に助けられてゆく。青年は主人公に迷惑をかける妖怪や、主人公にセクハラをする妖怪をぶっ飛ばすことで、主人公を守る。また、青年が配慮することで、主人公は妹と一緒にいる時間も増えるし、安心して暮らせるようになる。一方で主人公は、青年が苦手とする書類作業や人づきあいを手助けすることで、青年から求められる。こうして二人は、互いに足りない部分を補完し合い、絆を結んでゆく。
    • 主人公は少しずつ多摩市役所の妖怪を知ってゆき、仲間としてゆく。しかしあまりの忙しさに、「こんな薄給でこの仕事量なんて、やってられない」、「青年もほとんど仕事の役に立っていない」と、これ以上余計な仕事を抱えることに対しては、拒絶している。
    • (第1.2幕後半:ターニングポイント) あるとき、迷子になった河童の女の子を預かる。主人公たちはその女の子の面倒を見るが、女の子が事情を抱えていると知る。
    • それは、女の子の河童家族たちが悪い妖怪に脅かされていたこと。そして女の子とその家族たちは、妖怪に優しいことで有名な多摩市役所を頼ってきたこと。その過程で河童家族は、悪い妖怪の手にかかり、とらえられてしまったこと。
    • 主人公は女の子の境遇を知り、そして持ち前の面倒見のよさから、女の子を助けてゆく。
    • (最後の晩餐) 主人公は気がつくと、妖怪たちを好きになっていることに気づく。そして「河童の女の子の面倒を見る」という余計な仕事を率先してやっている自分に気づき、「自分はこの仕事が嫌だったはず」と思い出す。もしこの仕事を好きになってしまうと、自分はきっと、まともな生き方ができなくなると分かる。
    • だけど、純粋な女の子に対しては、優しさを与えられずにはいられない。こうして「妖怪管理の仕事が嫌い」でいられる最後の時間を過ごしてゆく。
    • (中盤の盛り上がり) 市役所の妖怪管理課に、悪の妖怪(悪の河童たち)が襲いかかる。悪の河童たちは、河童の皿を高値で取引することで、私腹を肥やしている悪者になる。
    • 運悪く、青年は主人公たちを守るために傷を負い、動けなくなってしまう。
    • 悪の河童が持つ強大な暴力に対して、市役所職員たちは誰も抵抗できずに、脅かされてゆく。そしてついに、女の子が連れ去られようとする。それによって主人公は、「女の子を助けたい、妖怪たちを助けたい」と願う。そして無力にもかかわらず、悪の河童たちと向き合い、女の子を助けようとする。
    • その暖かい思いに触れて、主人公が復活する。そして悪の河童たちの攻撃をかわし、主人公と女の子を安全な場所へと連れ出す。
    • (報酬) 主人公は、青年には過去の事情があると知る。それによって主人公は、青年がなぜこの妖怪管理課で働いているのか、そしてなぜ青年は普通の人間社会で働かないのか、何らかの哀しい事情を持っていることを察する。
    • 青年は「俺は多摩に助けられた。だから多摩に関わるもの全てを、俺が守ってやる」と、傷ついた状況で立ち上がり、悪の妖怪たちと戦うことを決意する。
    • 主人公は、青年がずっと人間社会から受け入れられずに、孤独を抱えていたのだと知る。
    • (第1.3幕:帰路) 青年は傷つきながらも、悪の河童たちと向き合い、戦ってゆく。同時に、青年は女の子に住民票を作ってあげて、「多摩市で保護してやる」と安心させる。
    • 主人公は、青年が孤独を持っていることを知り、どう接すればいいのか分からなくなる。そして今までのようなやりとりができなくなり、ぎくしゃくした関係になってしまう。そして、傷ついても自分たちを守ってくれる青年に、好意を持たざるを得なくなる。
    • 青年は雑魚の敵を一掃してゆき、ついに残すは河童の親玉だけになる。
    • (クライマックス) 親玉との決戦が始まる。だが、普通の人間でしかない青年が、強力な妖怪に勝てるはずもない。
    • 青年は危機的状況になるが、そこで主人公はようやく、青年が主人公に気を遣って、「普通の人間のように振る舞おう」としていることを知る。それに気づいた主人公は、「どんな青年でも、受け入れる」と伝える。それによって青年は人間あらざる必殺技(「なんとか棒」)を使い、親玉を倒す。
    • 青年は主人公に、「俺が人間っぽくなくて、こんな妖怪のような力を持つ奴で、がっかりしたか?」と問いかける。主人公は、青年がその特殊な力を負い目にしていて、人間社会に打ち解けられなかったのだと察する。主人公はそれを全く気にせずに、むしろ「何それすごい! 私にも貸して!」と好意的に受け入れる。青年は「よかった」と微笑み、二人は打ち解け合う。
    • (エンディング) 主人公は、冒頭と同じような、妹と一緒に暮らせる日常に戻る。だけど、一つだけ変わったことがある。それが、「多摩市役所の妖怪管理課でバイトをするようになった」ということ。河童の女の子は、家族と再会できる。一方で主人公は、多摩と青年を今まで以上に好きになる。
    • だけど、デリカシーのない青年や妖怪たちの態度、そして膨大な仕事量に、「やっぱりやめときゃよかった」と後悔する。(バッドエンドにすることで、第2話に続ける)
  • 第二幕前半:
    • 主人公が多摩市全体で仕事をする、新たな日々が描かれる。主人公は青年と一緒に、多摩市の妖怪スポットを訪れて、そこで妖怪たちの問題と、妖怪に関わる人間たちの問題を解決してゆく。
    • 主人公は今までの貧乏経験と、面倒見がいい性格から、青年だけでは解決できなかった問題を、どんどん解決してゆく。それによって、多摩の妖怪と、妖怪に関わる人間たちからどんどん好かれてゆき、彼らを仲間としてゆく。
    • その過程で、主人公が危ない目に遭いそうになったら、青年が助ける。こうして二人は絆を結んでゆく。(この辺は全てサブプロットで構成する)
    • 主人公は少しずつ多摩市の特色と、多摩の妖怪を知ってゆく。そして、「市役所の妖怪管理課で、正職員にならないか」という誘いまである。しかしあまりの忙しさに、「こんな薄給でこの仕事量なんて、やってられない」、「青年もほとんど仕事の役に立っていない」と、やはりこれ以上余計な仕事を抱えることに対しては拒絶している。
    • 妖怪の問題は、それぞれ全く独立に起きているように見えて、実は共通する敵(悪の妖怪組織)が裏で操っていることが分かってゆく。だが、悪の妖怪組織が何者かは、この段階では主人公には分からないし、青年に問いかけても答えてくれない。
  • 第二幕後半:
    • (ターニングポイント) あるとき、多摩に逃げてきた妖怪の少女を保護する。関東の地下では黄泉(よみ)と呼ばれる巨大な妖怪のすみかがあるが、その子はその黄泉の皇女であると分かる。主人公たちはとんでもなく高貴な妖怪を保護してしまい、黄泉で大きな騒乱が起きていることを知る。
    • 主人公たちは、悪の妖怪組織から狙われるようになってしまう。その組織は、黄泉の皇族を滅ぼし、その力を我が物にして私腹を肥やそうと企む悪の集団になる。だから、彼らは皇女を手に入れてその力を奪おうと、主人公たちに魔の手を伸ばす。
    • 第一幕での河童の騒動も、第二幕前半での妖怪問題も、全て背後にはその組織が絡んでいたと判明してゆく。
    • 主人公は皇女と打ち解けることで、皇女の味方をして、自発的に守ってゆく。そして、悪の妖怪組織を倒す方向に動いてゆく。
    • (最後の晩餐)主人公たち市役所職員は、悪の妖怪組織との決戦を前にする。敵妖怪の軍勢を迎え撃つべく、多摩市で迎撃態勢を整えてゆく。
    • 主人公は青年から、「お前はただのバイトだ。危険だから、踏み込む必要はない。逃げてもいいんだ」と言われる。だけど主人公は、「自分も力になる」と申し出る。
    • そこで主人公は、自分が多摩と多摩に住む妖怪たちを好きになっていることに気づく。そして「皇女を救う」という余計な仕事を率先してやっている自分に気づき、「自分はこの仕事が嫌だったはず」と思い出す。もしこれ以上踏み込むと、自分はきっと、普通の生き方はできなくなると分かる。
    • だけど、皇女や妖怪たちに対しては、優しさを与えられずにはいられない。こうして「妖怪管理のバイトが嫌い」でいられる最後の時間を過ごしてゆく。
    • そして決戦の夜が訪れる。主人公たち市役所の妖怪管理課職員は全ての準備を完了し、装備を調え、決戦の場へと赴く。
    • (中盤の盛り上がり) 多摩市に、悪の妖怪組織が襲いかかる。多摩市全体が主戦場となってしまい、街に火の手が上がってしまう。
    • いくつかの逆転劇を経て、青年は主人公たちを守るために傷を負い、動けなくなってしまう。
    • 青年が動けなくなることで拮抗が崩れ、多摩市の勢力は敵に抵抗しきれなくなってゆく。そしてついに、敵の親玉が登場して、皇女を連れ去ろうとする。
    • だがそこで、主人公が単身、皇女を守ろうとする。無力な人間である主人公の無駄な抵抗に、敵の親玉は「なぜ人間が妖怪にそこまで肩入れする」とあざ笑う。それでも主人公は悪の組織と向き合い、「妖怪でも、違う種族でも、相手のことを知れば、相手のことが好きになる」と、妖怪たちのいいところを語る。
    • その暖かい思いに触れて、主人公や多摩の妖怪たちが復活する。そして敵の親玉の攻撃をかわし、主人公と皇女を安全な場所へと連れ出す。
    • (報酬) 主人公は、青年がこの市役所に勤めるようになった過去の経緯を知る。青年は普通ではない力を持っていて、それを恐れられたために、人間社会にはいられなくなったこと。そしてこの多摩の妖怪たちだけが、青年を受け入れたこと。
    • 青年は「俺は多摩に助けられた。だから多摩に関わるもの全てを、俺が守ってやる」と、傷ついた状況で立ち上がり、敵の親玉に決戦を挑むことになる。
    • 主人公は、青年がずっと人間から受け入れられずに、深い孤独を抱えていたのだと知る。
  • 第三幕:
    • (帰路) 崩壊の危機に瀕した多摩市だが、敵側にも不測の事態が起こることで、敵は一時的に襲撃を止めなければならなくなる。それによって主人公たちは、一時的な猶予を得る。また、襲撃再開の時期が決まり、タイムリミットが設定される。主人公たちは、それまでに敵の親玉を倒さなければならない。
    • 青年は皇女に住民票を作ってあげて、「多摩市で保護してやる」と安心させる。また、ここで敵の親玉に対して有効な「武器」(道具でも人間でもOK。ここでは破壊力のある道具とする)が届けられることになるが、決戦までに間に合わないと判明する。
    • 主人公は、青年の孤独を知ったために、「自分が青年を好きでいる。だから青年はひとりぼっちじゃない」と伝えたくなる。だけど伝えられず、ぎくしゃくした関係になってしまう。そして、傷ついても孤独でも、自分たちを守ってくれる青年に、好意を持たざるを得なくなる。
    • 青年は傷つきながらも、悪の妖怪組織と向き合い、迎撃してゆく。そして敵の親玉へ接近してゆく。そしてついに、敵の親玉の元へとたどり着くことに成功する。
    • 一方で主人公は、ようやく完成した武器を青年に届けるために、青年の元へと向かう。
    • (クライマックス) 青年と親玉との決戦が始まる。いくつかの逆転劇を通して、青年は絶体絶命の危機を迎える。
    • 青年が死を覚悟した瞬間、主人公が身を挺して青年を守る。青年が「どうしてこんなことを!?」と叫ぶと、主人公は傷つきながらも、「私は人間として、人間である青年が好きだから」と告白をして、青年に武器を与え、意識を失う。
    • 主人公の愛情を知った青年は、「自分は孤独じゃなかった」と知る。同時に、今まで助けた妖怪たちや、妖怪に関わる人間たちが、青年を守り、力を与えようとする。
    • それによって青年は復活して、主人公がもたらした武器の力を発動させて、敵の親玉を倒す。
    • (エンディング) 主人公は、冒頭と同じような、妹と一緒に暮らせる日常に戻る。だけど、一つだけ変わったことがある。それが、「多摩市役所の妖怪管理課で正職員となり、仕事をするようになった」ということ。
    • 黄泉の皇女は多摩が気に入り、多摩市に住むことになる。それによって、ますます多摩が妖怪で賑わうことになる。主人公は傷が完治して、青年と付き合うことにして、青年にキスをする。こうしてハッピーエンドへと導かれる。
 

原作第1話では第3幕が薄い状態ですが、青年にも劣等感を加えることで、第3幕をよりドラマティックに展開させています。

 

自分なりの王道展開に持ち込む、という技法

こういう風に見ると、もう完全に相似形で、登場人物と規模を変えただけだと分かります。

でも、ちゃんと同じように盛り上がりますよね。

後は、中盤の盛り上がりで青年が戦えなくなる理由に変化をつけたり、黒幕を倒す方法に変化をつけることで、王道の中でも目新しさを追加できます。

すなわち、この構成法を用いれば、「自分なりの王道展開」に持ち込める、ということです。

 

これはある意味、第1話を元にメインプロットを作ることもできますし、メインプロットを元に第1話を作ることもできる、ということです。

なので、第1話とメインプロットを相互に照らし合わせることで、互いに足りない部分を補うこともできるでしょう。

 

で、規模をもっと大きくしたい場合、次は「多摩市」から「東京全域」、「関東全域」、「日本全域」、「世界全域」と広げていくことで、長編化することができます。

登場する妖怪たちも、ローカルな妖怪から、グローバルな妖怪(モンスター)に変わっていくわけですね。

 

「クロクロク」が途中からトーンダウンした原因

実はこの作品は最初の方はよかったんですが、次第にトーンダウンしてしまい、打ち切りとなってしまったようです。

なぜ途中でトーンダウンしたのかというと、このステップを外してしまったからのように思います。

第1巻のラストで合同研修編が始まりますが、そこでいきなり関東全域だけでなく、全国区にしてしまったわけですね。

本来は、まずは多摩内で妖怪の問題を解決して、その後で全国展開するのが正常な流れです。

 

また、同じように途中から、主人公を少女(千秋)ではなく、青年(クロク)として扱ったのも問題でした。

主人公が少女であれば、メインプロットは「好きになる」(ネタ帳1巻収録)になります。

ですが青年を主人公として扱う場合、メインプロットは「恨みを持つ」(ネタ帳1巻収録)になります。

キャラクターの視点によって、プロットの流れが変わってしまうわけですね。

 

青年を主人公とする場合、冒頭で青年がなぜ恨みや劣等感を持ったのかを語ることになります。

その前振りがなければ、バトルをしても盛り上がらずに、効果がないんですよね。

それなのに、途中からメインプロットを「好きになる」から「恨みを持つ」に鞍替えしても、その前振りがありません。

それによって、どんなにバトルを組み込んでも、「青年がなぜ戦うのか」という動機部分が見えないので、盛り上がらなくなるんですよね。

それが、途中で盛り上がらなくなった原因だと分かります。

 

攻めの挑戦だから、未来につながる

ただ、私はこういう積極的な挑戦が好きだったりします。

これは守りに入る鞍替えではなくて、売るために攻める鞍替えですからね。

「クロクロク」では少し失敗しましたが、これは十分に、未来につながる失敗のように思います。

 

「クロクロク」は構成力もあり、キャラクターも魅力的で、とてもいい作品でした。

こういう作家さんには、是非成功して欲しいなと思っていたりします。

 

まとめ

こんな感じで、第1話からでも全体を構成することができますし、「自分なりの王道展開」や「その作品なりの王道展開」を作ることができます。

これができれば、全体像が見渡せなくても、冒頭の相似形で作れるので、作りやすくなるかと思います。

メインプロットを作るのが苦手な人には、強力な技法になるかなと思います。

 

ということで、今日は「自分なりの王道展開」を作る、物語の構成法ということで、お話をしてみました。

今日はここまで~。

By | 2016-08-02T21:16:06+00:00 2016年 8月2日(火)|作家向け|(作家向け)「自分なりの王道展開」を作る、物語の構成法(「クロクロク」の例) はコメントを受け付けていません。