今日は、作家向けのお話です。

「単発の物語を、連載形式にするテクニック」ということで、お話をしてみましょう。

 

単発話を連載にする場合、どうやって全体の話を再構成するか

雑誌とかテレビアニメ、テレビドラマでは、単発で作ったお話がヒットした場合、連載にする場合がありますよね。

これは雑誌やテレビアニメ、連続テレビドラマみたいな連載形式だと、「お客の反響を見てからの規模修正」ができる強みがあるからですね。

連載形式ではないゲームなどでも、売れた単発ものをシリーズ化したり、続編を作るとか、よくあることです。

 

すると、作家さんは「単発の物語を連載化する」という大きな問題を抱えることになります。

「あれで完結したのに、どうやって続編を作ればいいの?」

「作品のテーマやコンセプトを変えずに、どうやってさらに話を展開させればいいんだろう?」

みたいなことを感じる作家さんも多いかと思います。

 

「売れるタイトル」というのは、継続的に利益を出してくれるものです。

すると、単発の物語を連載化できるノウハウを知っているかどうかで、利益額ががらりと変わっちゃったりするものなんですよね。

特にメジャーでは、作家のファンよりも作品のファンが影響力を持つので、「売れるシリーズ」を作れる人は有利になります。

 

じゃあ、どうすれば単発の物語を連載形式にできるのか。

今回はその方法を説明しておきましょう。

 

単発の物語を、連載形式に変換する方法

次のようにして、話のコンセプトや軸を保ったまま、単発の物語を連載形式にすることができます。

 

単発の物語を、連載形式に変換する方法:

  • 単発話のラストを、あえてハッピーエンドにせずに終わらせる(もしくは第2話の冒頭を、「うまくいったと思ったけど失敗していた」という状態から始める)
  • そして、単発話を連載版の第一幕(もしくは第一幕「日常」)として扱う
  • 2話目(続編)は、連載版の第二幕前半(もしくは第一幕「冒険への誘い」直前)から始める
  • 連載形式のメインプロットは、単発話と相似形にする
    • 連載版の第一幕: 単発話のメインプロットそのもので、ラストを失敗させる。(単発話のラストを修正できない場合、第二幕前半で失敗した状態から再開する)
    • 連載版の第二幕前半: 単発話の第二幕前半と相似構成。
    • 連載版の第二幕後半: 単発話の第二幕後半と相似構成。
    • 連載版の第三幕: 単発話の第三幕と相似構成。

 

これは図で見ると分かりやすいので、次図を参考にするといいでしょう。(以下では、単発話を第一幕として扱う流れで説明します)

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こういう流れで、「かさ増し」をするわけですね。

 

わざとハッピーエンドにせずに、同じ構成で続行させる

ほら、よく「完結するはずだったラストシーンを、わざとハッピーエンドにしないことで続行させる」というテクニックがありますよね。

それとか、完結した話を、新しい続編では悲劇から再開する、みたいな。

 

例えばどこぞの月刊少女漫画雑誌では、よく3話構成で短い連載をさせるんですよ。

すると、最初の2回で人気度を測って、それである程度の人気が出ていればハッピーエンドにせずに連載続行します。

もし人気がなければ、3回目でハッピーエンドにして終了、という形にしているようです。

 

他の例で言うと、漫画「君に届け」では、読み切り版では恋人役が主人公に告白をした(好意を伝えた)場面で、ハッピーエンドで終わります。

でも、第2話の冒頭で、「主人公は告白だと気づかなかった」として、さらに「恋人役は、『自分が自意識過剰で勘違いだった』と思い込む」とすることで、結ばれていない状態から再開します。

で、再び両者に接点が起きて、恋を進めていくわけですね。

 

さらに他の例では、漫画「シティーハンター」は、主人公が恋人役と結ばれて、ハッピーエンドで終わりました。

でも、その続編の「エンジェルハート」では、その冒頭で「結ばれた恋人役が、事故で死んだ」と、バッドエンド状態から再開します。

そして、新たな恋人役が登場することで、同じようなストーリー展開で物語が進んでいきます。

 

そんな風に、もし単発話のラストを修正できない場合は、第2話(続編の初回)の最初で「ハッピーエンドになったと思ったけど、いろんな事情で元に戻った」とするわけです。

そして、新たな冒険への誘いがあるなり、「失敗したのはこれこれこういう個別の問題があるからだ」と個別の目標に向かって動き始めるなり、話を進めていくと。

 

ここでは単純に4倍にしていますが、連載版を単発話の2倍の量にしたい場合、連載版の第二幕前半でハッピーエンドにして打ち切りにします。

3倍の量にしたい場合、連載版の第二幕後半で同様に打ち切りにします。

そういう風に、少量の続編が欲しかったとしても、まずは4倍のものを作って途中で打ち切りにする方が、楽に良質なものを構成できます

そうやって分量調整をするといいでしょう。

 

こういうコツでさらに大きなメインプロットを再構成することで、コンセプトをそのままに、そして話の軸がぶれずに物語を続けることができます。

 

アニメ「アルドノア・ゼロ」を1シーズンから4シーズンに拡張する例

実際に、単発話を連載形式にする流れを見てみましょう。

今回使う例は、テレビアニメ「アルドノア・ゼロ」です。(第1話は、こちらで閲覧できます

 

内容はというと、ガンダムに近い、男の子向けなロボットアニメです。

物語の舞台は、今の歴史とは違う経緯をたどった、別の地球と火星になります。

その世界では、人類は月面に着陸した際に、超文明の遺跡を発掘します。

その超文明によって人類は火星にも移住できるようになり、火星に火星帝国が誕生します。

 

そんな火星帝国が、地球の豊かな資源をうらやみ、ついに地球への侵攻を開始します。

主人公は、地球に住む普通の高校生の青年(界塚イナホ)で、人型戦闘機を操れる教科を受けています。

一方で主人公の相棒役として、火星軍の一軍人である若者(スレイン・トロイヤード)がいます。

そんな主人公と相棒役が共に戦争に巻き込まれてしまい、二人は敵同士として戦いつつも、互いに力を合わせて戦争を終結に導いてゆく……というお話になるんですが。

 

ちなみにこの物語は、「主人公と相棒役」という軸で動いているので、ある意味、女性向けにも通用しそうな構成になってます。

言うなれば、普通の物語でいう「恋人役」の存在が、「相棒役」に変わった形になります。

主人公は相棒役に対して嫉妬や怒りを持ちながらも、協力して敵を倒してゆく……という流れですね。

 

実際に、1シーズンから長編化してみる

で、この作品がまさに、1シーズンで完結予定だったものを、無理矢理連載形式にして、引き延ばした形になります。

で、1シーズン目(1~12話)はすっごい面白いのに、2シーズン目(13~24話)は急にトーンダウンしてしまうんですよね。

いわゆる、2シーズン目の構成に失敗してしまったという。

 

これがまさに、上記のテクニックを知らなかったから起こった失敗例になります。

1シーズン目の最終話をバッドエンドにしたのはいいものの、2シーズン目では1シーズン目とは全く違う物語になってしまったんですよね。

 

じゃあ、ここから実際に、「アルドノア・ゼロ」を4シーズンに拡張したメインプロットを再構成してみましょう。

 

注:以下ではテレビアニメ「アルドノア・ゼロ」のネタバレと、プロット修正案が含まれます。楽しみを大きく損なう可能性があるため、この作品を楽しみにしている方は、以下は閲覧しないようにお願いします

 

「アルドノア・ゼロ」の拡張版メインプロットを再構成すると、こうなる

まあ、新たに作るメインプロットは、「作ってみましょう」と言うまでもなく、第1シーズンとほぼ同形です。

第一幕とメインプロットにおいて、主人公と相棒役の関係が相似形であることに注意しつつ、以下を見てみるといいでしょう。

(相似形であることを分かりやすくするために、ここでは第1シーズンの中身も三幕構成で示しています)

 

  • 第一幕(第1シーズン、1~12話):
    • (第1.1幕:日常) 世界観説明と、主人公と相棒役、世界が抱える問題をそれぞれ説明。
      • 世界観は現代の地球で、違う過去をたどった世界の話。その世界では、人々は月面で超文明を発見して、火星に移り住むようになっている。そして火星帝国が誕生し、火星帝国は豊かな資源を求めて地球侵略を企んでいる、という問題を抱えている。
      • なお、15年前にも火星軍と地球軍の間で戦争が起きていて、そのときに「月が破壊される」という謎の大事故が起きている。
      • 主人公(界塚イナホ)は地球に住む、高校生の青年。学校で人型戦闘機の訓練を受けているが、熱くなれるものがなく、漠然とした毎日を過ごしている。
      • 相棒役の若者(スレイン・トロイヤード)は、火星軍に属する若き軍人。末端の軍人だが、父親が偉大な研究者だったために、王女(アセイラム・アリューシア)の家庭教師のような役割を担っている。王女には過去に命を助けられたことがあり、王女を心から慕っている。
      • 王女は火星帝国国王に大きな影響力を持つため、戦争終結に導く切り札になるという説明。
    • (冒険への誘い) 地球と火星の友好のため、王女が地球へと訪れる。だがそこで王女(の影武者)が暗殺されるという事件が起こる。それを契機に火星軍は地球に侵攻を開始。地球の市民は火星軍によって殺戮されてしまう。主人公もここで友人を失い、戦争に対して強い憎しみを持つ。
    • 運悪く逃げ遅れた主人公は、王女と出会う。そして王女から、「私(王女)の生存を公表することが、停戦へとつながる道だ。だから私をしかるべき場所へと連れて行って欲しい」と言われる。
    • (拒絶) だが、主人公は拒絶する。
    • (メンター) 主人公を取り巻く状況説明がされる。火星軍は王女暗殺の復讐という名目で地球への侵攻を開始したので、王女が生きていると公開できれば戦争を終結できること。だが通信施設が破壊されているため、しかるべき場所(地球軍本部)まで王女を連れて行かなければならないこと。そしてその道のりには、火星軍がひしめいていること。また、地球軍は防衛で手一杯で、主人公以外にそれをできる人がいないこと。
    • (第一関門) 火星軍に追い詰められた主人公たちは、目の前の敵と戦わざるを得なくなる。そして学校の練習機で出撃して、知恵を用いることで敵の撃退に成功する。
    • 結果として、主人公は戦争への憎しみから、戦争を終結させることを決意する。そのために、その設備が唯一残っているであろう地球軍本部へと、火星軍を撃退しつつ王女を護送することを受け入れる。
    • 一方で相棒役は、偶然にも主人公と火星軍が戦った場に居合わせる。相棒役は主人公と偶然にも敵同士として接触して、互いを「嫌な敵だ」と認識する。また、相棒役はそこで偶然にも王女の姿を確認して、「王女は生きている」という事実を知る。しかし王女と接触することはできずに終わる。
    • 相棒役は、直属の上官が王女暗殺計画に関わっていたと知る。それによって王女が生きていることを言い出せなくなり、「軍に知られずに、単独で王女を救出して、王女の願いである和平の実現をする」という目的を持つようになる。
    • (第1.2幕前半) 主人公と相棒役は、手段こそ違えど、同じ目的を持ち王女を守ってゆく。
    • 主人公は、地球軍本部へと王女を護送してゆく。その過程で、襲い来る火星軍を撃退してゆく。
    • 一方で相棒役は、主人公たち独立部隊に目をつけて、王女を奪還するために、命令違反を犯してまでも出撃する。
    • 主人公と王女は、軍紀違反をした火星軍を前にして、絶体絶命の危機を迎える。それを知った相棒役は、王女を守るために、主人公の援護をする。一方で主人公も相棒役の援護を信頼して、地球軍と火星軍という敵同士のはずなのに、共に仲間として戦い、敵である火星軍を撃退する。
    • こうして主人公と相棒役は、互いに「こいつは使える」と一目を置く。だが王女を巡っての奪い合いとなり、結果として主人公と相棒役は決裂する。そして主人公は王女を渡さず、相棒役を撃墜してしまう。
    • (第1.2幕後半:ターニングポイント) 決裂した主人公と相棒役は、それぞれ相手を頼ることなく、独自の方法で戦争の発端となった事件へと近づいてゆく。
    • とある島で、主人公たちは火星軍に襲われて、母艦を失ってしまう。しかし運良く、15年前に使われていた火星軍の戦艦を発見する。その戦艦は「アルドノア」と呼ばれる特殊なエネルギーで動くもので、火星帝国王家の血筋でなければ起動できない。王女はみんなを助けたいばかりに、王女暗殺計画のメンバーが紛れ込んでいる可能性がある中で、正体を明かして戦艦を起動し、敵を一時的に撃退する。そしてその新たな戦艦で、火星軍撃退の準備を進めてゆく。
    • 一方で相棒役は、火星軍に逮捕されて、「なぜ地球軍に手を貸したのか、理由を吐け」と拷問される。だが、王女が生きていることは口が裂けても言えない。 逆に謎かけの言葉を使うことで、王女暗殺計画の黒幕が誰かを突き止めようとしてゆく。
    • (最後の晩餐) 地球軍本部を前にして、主人公は強大な火星軍と戦わなければならない。その決戦を前にして、主人公は王女と最後の安らぎを味わう。夕暮れの海を一緒に眺めながら、純粋な王女に対して、主人公は恋心を寄せるようになってしまう。
    • 相棒役も、軍上層部から事情を理解されて、拷問から解放される。そしてついに、王女暗殺計画の核心へと近づいてゆく。
    • (中盤の盛り上がり) 主人公たちは、決戦の時を迎える。だが、決戦の直前で王女がふと席を外したときに、王女は暗殺計画メンバーの生き残り(一人の女の子)によって首を絞められて意識を失う。それによって戦艦が起動できなくなり、主人公たちは危機を迎える。
    • だが王女は息を吹き返して、自分を殺そうとした女の子に共感して、許す。それによって、その女の子は主人公たちの味方となる。そして戦艦が起動することで、主人公たちは危機を脱出し、敵を倒す。
    • (報酬) 主人公たちは、女の子から王女暗殺計画の首謀者を明かされる。それが火星軍の前線指揮官であり、この人物が戦争開始の黒幕(第1シーズンのボス敵)になる。
    • 同時刻、相棒役もまた、この戦争を引き起こした黒幕が、火星軍の前線指揮官であると分かる。相棒役はその前線指揮官を殺そうとするが、失敗する。
    • 主人公は全ての障害を取り払い、目的を果たすために地球軍本部へと向かうことになる。
    • 一方で、戦争の黒幕である火星軍の前線指揮官は、地球軍を滅ぼすべく、主人公たちがいる地球軍本部へと直接攻撃を仕掛けることになる。
    • (第1.3幕:帰路) 主人公たちは、地球軍本部に到達する。だが同時に、火星軍の前線指揮官によって、襲撃を受ける。
    • 地球軍本部では、王女の生存を発表できないと分かる。そこで主人公たちは、「目の前に新たにできた火星軍の拠点と放送設備を占拠することで、王女の生存を火星軍に通達し、停戦に導かせる」という最後の手段に着手する。
    • そのために主人公は、火星軍と戦いながら、王女を連れて敵拠点へと侵入してゆく。
    • 相棒役もまた、王女を救うために、戦闘機を確保して主人公の元へと走る。
    • (クライマックス) 主人公は敵の拠点で、ボスであり黒幕である前線指揮官と戦う。主人公は絶体絶命の危機にさらされるが、相棒役の助力によって逆転勝利を得る。
    • (エンディング) しかし停戦への通達を実現する前に、王女が残党によって撃たれてしまう。主人公も重傷を負ってしまう。結果として、停戦の実現は失敗してしまう。(バッドエンドとして扱うことで、連載版に移行する)
    • (ハッピーエンドで終わる場合) ここで王女が停戦の通達を実現して、戦争が終結してハッピーエンド。
  • 第二幕前半(第2シーズン、13~24話): (第1.2幕前半と相似形)
    • 1年半が経過する。王女は相棒役がかくまっている。王女は一命を取り留めるが、記憶を失ってしまっているため、停戦のための布告ができずにいる。そのため、戦争は泥沼化している。
    • また、火星軍内の戦争推進派が王女を暗殺しようとしているため、相棒役は王女を火星に返すこともできずに、月面の火星軍内で孤軍、王女を守っている。火星帝国国王も、側近の情報操作によって王女が生きていることを信じようとしない。
    • 主人公も、怪我から復帰して、地球軍に戻る。だが、主人公はなぜか火星の戦艦を起動できるようになっていて、地球軍内部から「スパイではないか」、「主人公たちを始末した方がいいのではないか」と脅威を得ている。
    • そんな中、地球軍が火星軍に対して反転攻勢するための作戦を発動する。その作戦は、王女を殺害することで、火星軍基地の力を奪おうとする内容になる。実際は王女を殺しても火星軍の力を奪えないのだが、上層部の誤解によって計画は実行に移されてしまう。
    • 火星軍内に、地球軍にそのような情報をもたらしたスパイ(第2シーズンの黒幕)がいるという前振り。
    • 主人公は、地球軍として王女殺害の作戦に参加しなければならなくなる。主人公が地球軍の味方であると証明しなければならないし、実際に他の地球軍から襲われて、地球にいられなくなってしまう。
    • 一方で相棒役も、火星軍からスパイの疑いをかけられてしまう。そして王女を伴った上で、地球軍(主人公たちの部隊)を迎撃しなければならなくなる。
    • 当然、主人公も相棒役も、王女を殺すことは和平への道を閉ざすことになると分かっているし、想いを寄せている王女に犠牲にすることなどできない。
    • そこで、主人公は相棒役と協力することで、うまく自分たちの潔白を示すように立ち回りつつ、王女の命も守ってゆく。それによって、主人公と相棒役は、少しずつ互いを信頼してゆく。同時に主人公と相棒役は、自分たちが真のスパイによってはめられているのだと気づいてゆく。
    • 主人公と相棒役は、自分たちを陥れようとしたスパイの黒幕(第2シーズンのボス敵)を突き止める。だが主人公たちはその黒幕にはめられて、火星軍と地球軍の双方から狙われるようになり、絶体絶命の危機に陥る。
    • そこで王女の記憶が戻り、王女がスパイの黒幕(王女の妹)を止めることで、主人公たちは危機を脱出する。そして全貌が明かされることで誤解が解け、主人公は地球軍に、相棒役は火星軍に戻ることができる。
    • 主人公と相棒役は、信頼し合えるようになったと見せかけて、最後の最後で王女の取り合いをしてしまい、決裂してしまう。
    • (ここで打ち切る場合) 王女が停戦の通達をして、戦争が終結してハッピーエンド。
  • 第二幕後半(第3シーズン、25~36話): (第1.2幕後半と相似形)
    • (ターニングポイント) ついに火星帝国と地球政府は、共に全面戦争をする方向に動き始める。もし全面戦争が起こってしまった場合、多くの人々の命が失われてしまう。
    • そんなとき、月面において火星へと大規模テレポーテーションできる、新たな超文明の遺跡が発見される。だがその遺跡を占領するには、大規模な軍が必要になる。そしてその遺跡を巡って、地球軍と火星軍は対立する。
    • 主人公も相棒役も、その遺跡を通って火星に赴くことで、王女を安全に火星帝国国王の元へと連れて行けると分かる。だが同時に、遺跡を占拠した側が戦争において戦略上大きな優位性を得ることになり、勝利が確定することなる。もし王女の国王説得が失敗した場合を考えると、主人公も相棒役も、遺跡を相手側の軍にゆだねるわけにはいかない。
    • 主人公は地球軍側として参戦、相棒役は火星軍側で参戦し、両者は再び敵同士として戦うことになる。
    • それと同時に、主人公と相棒役はそれぞれ、火星帝国が火星で発見した超文明「アルドノア」の力について、調べてゆく。アルドノアには隠された真の力(力の源)があると知り、謎として残されている。その謎を先に解明し、手に入れた方が勝利すると直感で分かる。
    • 主人公と相棒役は、遺跡群を確保してゆく過程で、互いに「アルドノアの謎」に接近してゆく。
    • (最後の晩餐) ついに主人公と相棒役は、アルドノアの謎の解明を目前とする。その謎は、超文明のテレポーテーション遺跡にあるため、そこを占拠せねばならない。すなわち、そこに踏み込むことは、全面戦争の開始を意味する。
    • 主人公と相棒役は、今までの関係でいられる最後の時間を過ごしてゆく。そして思い残すことがないように、やり残したことを全て終わらせてゆく。
    • ついに決戦の時が訪れる。主人公も相棒役も、準備を整え、決戦の場へと出撃する。
    • (中盤の盛り上がり) 遺跡を巡って大規模な戦闘が起こり、主人公と相棒役は敵同士として戦う。
    • 両軍は疲弊し、ついに主人公と相棒役は、独立部隊として遺跡内部へと同時にたどり着く。そこで主人公たちは、アルドノアの謎を知る。アルドノア帝国は元々、古代火星の文明だったこと。アルドノアは元々平和的な力だったこと。だがアルドノア帝国は内部分裂し、互いにその巨大な力を戦争に利用したこと。それによって、元々火星は大気や海などの豊かな環境があったのに、たった数ヶ月もしないうちにそれを失い、双方が滅んだことが判明する。
    • また、16年ほど前に「月が破壊される」という大事故(通称「ヘブンズ・フォール」)が起きているが、それも地球軍が一時的にアルドノアの力を得て、火星軍の持つアルドノアの力と衝突したために引き起こされたのだと判明する。
    • そしてついに、遺跡は地球軍によって占拠されてしまう。すなわちそれは、火星だけでなく、地球もアルドノアの力を手に入れたことになる。そんな巨大な力を持つ双方が戦争をすることで、歴史が再び繰り返されることが確定する。
    • (報酬) ここで、地球軍本部の指揮官が全ての黒幕だったと判明する。地球軍指揮官は火星人への恨みと、地球という豊かな資源を我が物とするために、アルドノアの力を得ようとしたこと。そのために王女暗殺計画を立案し、スパイを通じて火星帝国国王と前線指揮官をそそのかして地球へと侵攻させ、戦争を引き起こしたのだと。
    • 主人公と相棒役は地球軍指揮官に抵抗するが、時遅く、共に逮捕されてしまう。そして地球と火星、アルドノアの力を持つもの同士が戦うことで、地球と火星の双方が甚大な被害を受けると分かる。そして地球の豊かな環境も古代火星同様に失われると分かり、絶望する。
    • (ここで打ち切る場合) 黒幕を登場させずに、王女の通達によって戦争を終結させて、ハッピーエンドに導く。
  • 第三幕(第4シーズン37~48話): (第1.3幕と相似形)
    • (帰路) 地球軍は短期間でアルドノアの力を実用化して、火星軍への総攻撃を計画し始める。もし両軍がアルドノアの力を用いて衝突したら、火星は滅び、地球も火星同様に豊かな自然を失うと分かる。それだけは絶対に止めなければならない。
    • ここで主人公と相棒役は、王女を含む仲間たちによって助けられ、監獄から脱出することに成功する。そして主人公たちは、平和を望む地球軍と火星軍の仲間たちを一つにまとめ、新たな軍隊を組織する。その軍隊のトップとして、王女が就任する。主人公と相棒役は、その下につくことになる。
    • 地球側でもなく、火星側でもない主人公たちは、戦争を終結するために、アルドノアの力の源である「アルドノア・ゼロ」を破壊するために動き始める。月面にあるその施設を破壊しさえすれば、アルドノアの力は全て失われる。だが、そこには過去最大規模の火星軍と地球軍が布陣している。
    • 主人公たちは火星軍や地球軍と戦いながら、月面の遺跡へと接近してゆく。
    • (クライマックス) ついに主人公たちは、アルドノア・ゼロにたどり着く。ラスボスである地球軍指揮官を相手に、主人公と相棒役は協力して戦うが、窮地に追い込まれてしまう。
    • そんな二人を、王女が身を挺して助ける。王女だけでなく、主人公の仲間たちも身を挺して主人公たちを守る。そしてその通信や会話内容が全ての火星軍と地球軍にもたらされることで、全ての軍が「自分たちは間違っていた。このままでは双方が死に絶える。平和こそ大切だ」と目覚める。こうして戦争は終結する。
    • 最後は、残った地球軍指揮官との戦いになる。主人公と相棒役は、アルドノアの力に頼るのではなく、知恵と勇気で地球軍指揮官を倒す。そして「いつか自分たちも、アルドノアを超える技術を手に入れるかもしれない。でも、アルドノア帝国の悲劇を知っていれば、他の道を模索できるはずだ」として、アルドノア・ゼロを破壊する。
    • (エンディング) 主人公たちは冒頭のような、新たな日々を送り始める。ただし、一つだけ変わったことがある。それが、地球と火星が戦争を終結し、平和が訪れたこと。人々は豊かな資源を分かち合い、希望を持って生きている姿が描かれる。
    • 同時に、王女が「アルドノアの悲劇を忘れてはならない」と演説をする。そして主人公と相棒役は、心から信頼し合える仲間として握手をして、ハッピーエンドへと導かれる。

 

……と、こんな流れにできるでしょう。

おそらく、「第1.2幕前半と第2幕前半が相似形」、「第1.2幕後半と第2幕後半が相似形」「第1.3幕と第3幕が相似形」というのは、指摘されないと分からないんじゃないかと思います。

テンポが変わるとこれぐらい変わるので、単発話を連載版に拡張しても、読み手に「同じ展開だ」とばれることはほとんどありません。

しかも、同じコンセプトで物語を進められるようになります。

実際にこんな風に例で見てみると、このテクニックのすごさが分かるかと思います。

 

「アルドノア・ゼロ」を改善する場合の着眼点

戦争を主体とする物語では、基本的にテーマは反戦になります。

王道を目指すなら、こういう展開になるかなと思います。

 

当然のごとく、今回も解決には「黒幕を作る」を使っています。

ええ、黒幕は超便利ですからね! 使いまくり! もう大好き!(笑

で、連載版メインプロットにおける黒幕(全ての黒幕)は、消去法で地球軍指揮官に決まるかと思います。

 

ちなみにサスペンスでは、「間を持たせるには、全ての登場人物や組織を敵にしていくといい」という考え方があります。

なので、メインプロットの第二幕前半では、主人公たちは自軍からも疑われるようにしています。

そういうサブプロットを追加している、ということですね。

もっと大規模な物語にする場合、主人公の身近な仲間もここで敵対させることで、より多くのサブプロットを実現できます。

そうやって、間を持たせるわけですね。

 

アニメ「アルドノア・ゼロ」が第2シーズンから失速した理由

アニメ版の「アルドノア・ゼロ」で第2シーズンから失速した原因は、こういう全体像を描けるスタッフがいなかったことかと思います。

ストーリーのコンセプトと最初の3話は、ニトロプラスの虚淵玄さんが担当しているんですが、おそらくこの方は第1シーズンしか入っていないかと思います。

で、第2シーズンの構成は、別の脚本家さんが担当しているんですよね。

この脚本家さんはベテランで優秀な方なんですが、オリジナルを作るタイプではなくて、オリジナルを元に脚本を作り出すプロフェッショナルだったと。

 

だから、全体像が設計できる人が不在で、第2シーズンが見当違いの方向に進んでしまったわけですね。

メインプロットを設計できるスタッフを一人入れていると、がらりと変わったかと思います。

 

ただ、3話までの冒頭の前振り(アルドノアの力とか、月が破壊されている設定など)は素晴らしいんですよね。

その辺の意図をきちんとくみ取って回収できれば、上記のようなまとまったメインプロットを作れます。

こういう前振りを冒頭でしっかりできているのは、プロットを作る側からすると、すごいことだなと思ったりします。

虚淵さんは、それぐらいの4シーズンぐらいには拡張できる余裕を持たせた上で、全体を構成していたわけですから。

私はこの作品で初めて虚淵さんの作品に触れたんですが、私から見ても、純粋にすごい構成力だなと思います。

 

まとめ

そういう風に、続編は第1シーズンの相似形で実現できます。

この技術を知っておくだけで、特にメジャーで活躍したい作家さんにとっては、強いアドバンテージになるかと思います。

 

ということで、今日は「単発の物語を、連載形式にするテクニック」ということで、お話をしてみました。

今日はここまで~。

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