昨日に引き続き、作家向けのキャラ設定についてのお話です。

今日は、「主人公で最も重要な設定」についてお話ししてみましょう。

 

主人公で最も重要な設定とは?

主人公が魅力的かどうかって、言うまでもなく大切ですよね。

じゃあ、主人公の設定で一番重要なものって何でしょう?

明るい性格? 暗い性格? 見た目? 口癖? 性癖? 好み?

実は、これを適切に指摘できる人はほとんどいないんですよ。

 

実は、「この一つの設定さえ作れていれば、後は全て勝手に決まる」という、主人公にとっても根源となる、そんな重要な設定があります

そして、その根源となる一つの設定さえ作り込めば、一意に物語を作れるという設定です。

先日、私は「ストーリーを決めれば、キャラクターは一意に決まる。逆にキャラクターを決めれば、ストーリーも一意に決まる」と触れましたよね。

そのキーとなるような、重要な設定になります。

 

その「主人公における、究極の設定」とは何か?

もったいぶらずに、もう結論から言いましょう。

それが、「何に病んでいるか」です。

 

「心の病み」が主人公の中核となる

ここでの「病み」とは、精神面のもの、すなわち「心の病み」です。

あらゆる主人公は、何かしらの「心の病み」を抱えているものです。

(ただし、ここでは「キャラクターの魅力」を語っているので、駆け引きメインの作品では、主人公が心の病みを抱えていないこともあります)

この心の病みを生み出す原因を、心理学用語で「抑圧」と呼びます。

 

「心の病み」というのは、簡単に言うと「何らかの枷によって、ありのままでいられなくなってしまったこと」です。

これは具体例で見る方が分かりやすいので、例で説明してみましょう。

例えばヒーローものでは、主人公が大切な家族を、悪の組織に殺されたとしましょうか。

本当なら、主人公はそこで「哀しい」と泣いて、感情を発散させるところです。

そして哀しいという感情をその場で解決することで、「両親がいなくなったけど、自分は元気に生きていこう」と立ち直ることになります。

 

でも、何らかの要因で、そんな「哀しいと泣くこと」ができなかったとしましょう。

主人公が両親の死を受け入れられないかもしれませんし、悪の存在や、その動機を受け入れられないかもしれません。

すると、「哀しい」という感情を発散できずに、心の中で、解決できないわだかまりが生まれます。

この「解決できないわだかまり」が、抑圧になります。

 

抑圧が、「心の病み」を作り出す

人は抑圧を持つようになると、自然とその抑圧に絡む出来事を避けて生ようとします。

というのも、その抑圧を思い出すような出来事があるたびに、過去の哀しかった出来事を思い出してしまうからですね。

先の両親を殺された主人公の例で言うと、悪が他の家族を滅ぼしたら、主人公は「自分も両親を失った」と、当時の哀しみを思い出してしまうわけです。

そして、主人公は再び苦しむことになります。

 

だから、主人公はそんな苦しみを味わいたくないために、様々な対処をし始めます

ここに、「心の病み」、すなわち「ありのままでいられない問題」が生まれます

 

ある主人公は、「弱い自分はダメだ」と、ありのままの自分を否定するかもしれません。

この場合、努力に努力を重ねて優秀な力を身につけることで、悪と戦うことでしょう。

そして周囲を悪から助け、周囲の人々から感謝をされるかもしれません。

でも一方で、主人公自身はどんどん傷ついていき、いつまで経っても安らぐことはできません。

「本当は自分も幸せになりたいのに、戦いで傷つき、苦しみ続けている。それでも周囲に喜んでもらう」という、不健全な自己犠牲、すなわち「心の病み」を抱えているわけですね。

 

ある主人公は、「過去を思い出したくない」と、過去を捨てるかもしれません。

自ら過去の記憶を心の奥深くに閉じ込めて、自らの意志で、家族との暖かい時間を忘れてしまうわけです。

そして悪がいないような場所で、新しい人生を歩もうとするかもしれません。

でも、忘れたはずなのに、完全に忘れきることなどできません。

悪を遠ざけたり、暖かい家族像を遠ざけたりしても、時折それを見てしまうことで、苦しむわけですね。

「本当は自分も、家族の温もりを味わいたいのに、無理矢理記憶から追い出している」という心の病みを抱えているわけです。

 

ある主人公は、「哀しみを感じないようにしよう」と、感情を捨て去るかもしれません。

そして無感情になることで、あらゆる苦しみを克服しようとするかもしれません。

でも、無感情になりきっているはずなのに、時折苦しかったり、哀しみが出てくるものです。

「本当は、自分も喜びや悲しみを表現したいのに、それを閉じ込めている」という心の病みを抱えているわけですね。

 

まとめ

そんな風に、主人公に「心の病み」という設定を作るわけです。

恋愛物語では、それは「幼い頃に、両思いだった恋人役と別れる」という出来事になることが多いものです。

すると、主人公はそこで哀しみを発散できずに、「愛し合ったのに、離ればなれになってしまった」という抑圧を抱えます。

それが、「新たな恋に臆病になる」とか、「過去を思い出したくないために、特定の人と深く交わらない」とか、「恋に無感情になる」といった「心の病み」を作り出すわけですね。

 

ここまで説明すれば、「あ、その設定があれば、なんか物語ができそう」って感じますよね。

だから、主人公には「心の病み」という設定が一番重要になるわけです。

後は、この「心の病み」をより作り込むことで、自然といいキャラクターができるようになります。

同時に、物語の流れも決まります。

 

じゃあ、どうすればその「心の病み」と、昨日説明した「キャラクターの二面性(多面性)」とを絡ませればいいのか。

そして、この「心の病み」から物語の流れを作るのは、どうすればいいのか。

それは、明日以降で説明することにしましょう。

 

ということで、今日は「主人公で最も重要な設定」についてお話ししてみました。

今日はここまで~。

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