今日は久しぶりに、作家向けのお話です。
「たった4行の設定から、メインプロットを作る流れ」ということで、お話ししてみましょう。
「プロットを作って欲しい方募集」での反響
以前、プロットを作って欲しい方募集をしたじゃないですか。
募集直後は全然反響がなくて「こりゃダメだ」と思っていたんですが、実はその後、ちまちまと個別に問い合わせがあったり。
で、昨日説明したような現象も、ここで起こっていたりします。
すなわち、ファンの方がわざわざプロットを欲している人を探してくれて、「私の先輩で、2人ほど漫画を描いている人がいるので、プロットが必要でないか訊いてきました!」と言ってくれた……みたいな出来事があったんですよね。
これはファンの人が自発的に営業をしてくれているようなもので、とてもありがたいことだな~と思ったり。
ファンがいると、こういうことがよくあるんですよね。
自発的に宣伝をしてくれたり、営業に協力してくれたり、必要な情報を教えてくれたり、時にはチェックやデバッグみたいな制作でも協力してもらったり。
「自分には宣伝をする力がない」という人ほど、「出版社が大々的に宣伝してくれないと、宣伝できない」とか思いがちですが、そうではないんですよ。
ファンの人も、出版社と同じように、「これいいよ!」と大好きな作家や作品の宣伝をしてくれるものです。
しかも、自発的に喜んでやってくれるので、もう感謝ばかりの状態になれます。
実際に届いた、「たった4行の設定」
で、実際にとある漫画家さんから、「こういうプロットを作って欲しい」というネタをいただいたんですよ。
私にとっては初めての、他の人のネタをプロット化するということで、「わーいわーい(ノ´▽`)ノ」とか喜びながら(笑
そして、届いた情報がこちら。
- タイトル:「女子高生ラーメン同好会(仮)」
- 5人のラーメン好き女子高生が、高校のラーメン同好会の存続をかけて「全国女子高生ラーメン選手権」という料理大会に出る話。
- 有名な某アニメ作品のような王道ストーリー。
- キャラ設定も王道のもの。
以上!(どーん
……。
いや、もうね。
「たったこれだけの情報から、1本のメインプロットを作れというのか!」
みたいな(笑
思わず「あんた、めちゃくちゃ言うな!」みたいにツッコミを入れたくなったんですが(笑
設定がたった4行ですからね。
正直、見た瞬間は頭を抱えてました(笑
グルメ系というジャンルも想定外でしたし、何より設定が何もない状態ですからね。
どうやって、たった4行の設定からメインプロットを作るのか
でも、やってみると、意外とできるものなんですね。
なので、2日もせずに1本のメインプロットを仕上げられたという。
じゃあ、どういう風にして私がたったこれだけの情報から、メインプロットを仕上げたのか、その流れを説明してみましょう。
とりあえず「この某有名アニメ作品のような」ということで、そのアニメ第1話と、サイトでざーっと第1期のストーリー予告を見て流れを把握しました。
で、何を切り口にするかというと、ここでは「ラーメン選手権」という特殊な世界(スペシャルワールド)が明快になってますよね。
なら、大まかな流れとしては、「普通の女子高生が、ラーメン作りの世界(選手権)に入って、優勝する」みたいな展開になるものです。
すると、「ストーリー作家のネタ帳」第2巻の「無能者が英雄になる」が使えると分かります。
まあ、こういう特別な世界設定を元にストーリーを考える場合、だいたいが第2巻の「無能者が英雄になる」もしくは「英雄が無能者になる」で構成できます。
主人公の特殊能力を作る
で、次に主人公の特殊能力を作ります。
こういう「無能者が英雄になる」形のバトルものって、主人公が「隠された特殊能力」を持つものです。
全く役に立たないような欠点だと思っていた能力が、実はある世界ではきわめて重要な、長所となる能力だった、みたいな。
そして、その能力を遺憾なく発揮して、主人公は英雄になっていくと。
ここではその能力として、「食材や調味料選びの才能がある」としましょう。
料理は一切できないけれども、実家が自営業で、食品や調味料の卸売(おろしうり)業をしていて、その手伝いをしていると。
なので、「一流料亭やレストランがどういう食品や、どういう調味料を、どう組み合わせて使っているかを全て把握している」とします。
でも、本人はそれを能力だとは思っておらずに、「どうでもいいこと」だと感じていることになります。
「ラーメン同好会」のメインプロットを構成する
じゃあ、ここから「無能者が英雄になる」の内容を元にすれば、すぐにでもメインプロットは構成できます。
実際に、次のようなメインプロットになりました。(プロット提供先から許可を得ての公開です)
- 第一幕:
- (日常) 世界観の説明と、欠点を持つ主人公の日常。
- 世界観は現代日本の学園もの。主人公は普通の女の子で、高校に入学したばかりの新入生(高校一年生)。
- 主人公の特殊能力の説明。主人公の家は自営業で、両親が食品や調味料の卸売(おろしうり)業をしている。主人公は幼い頃からその品分けや配達を手伝わされていたため、一流の料亭やレストランがどの食材、どの調味料を使っているのかを全て把握している。また、仕入れ調査のために、それぞれの料理でどういう素材の組み合わせをしているか、材料について詳しく知っている。
- しかし学校のクラスでは、そんな能力など全く評価されない。それよりも、カラオケの曲を知っていることとか、テレビのアイドルを知っていることとかが重要になる。
- 主人公の家は、経営状態が厳しいことの説明。主人公が手伝わなければ両親に負担がかかるし、生活費も必要。だからクラスのみんなから「放課後遊びに行こう」と誘われても、泣く泣く断らざるを得ない。家の手伝いが忙しいので、流行曲を知る暇も、テレビドラマやアイドルグループに触れる時間もない状態。
- 主人公は「付き合いが悪い」となじられ、気がつくとクラスのみんなに全くついて行けずに、ひとりぼっちでさみしい思いをしている状態になる。
- 主人公は部活をしている生徒たちや、一緒に遊んでいる同い年の女の子たちを眺めて、「私もあんな風に、みんなと一緒に何かできればな」と思っている。しかし家の経営が苦しいので、我慢している状態。そして今日も泣く泣く、学校が終わると家の手伝いへと直行している。
- ちなみに両親は、主人公が高校生活をなげうって家を手伝っていることに、申し訳なさを感じている。母親は「一度きりの高校生活なんだから、もっと友達と楽しんでいいのよ」と伝えるが、主人公は家の事情を知っているだけあって、「大丈夫」と強がっている。
- (これはなくてもOK)ラーメン同好会側の風景も示しておく。メンバーたちは「このままだと、同好会としても成り立たなくなる。あと一人、新入生からメンバーを確保しないといけない」と語り合っている。また、「今週末にある選手権の準備も必要」、「麺もいい、ダシもいい、具材もいいはずなのに、何かが足りない」と悩んでいる。
- (冒険への誘い) その週末、主人公は食材を配達するために、街の中でも一番大きなイベント会場へと赴く。
- その会場で行われている大会が、「全国女子高生ラーメン選手権」(予選でも単発でもOK)になる。
- 配達を終えて休憩しつつ眺めていると、主人公はそこで、自分の高校も参加していることが分かる。しかしそのメンバーたちは、トラブルを抱えているようで血相を変えている。
- 様子をうかがうと、肝心な助っ人の一人が急に参加できなくなり、メンバーが参加に必要な5人に満たないことになる。そして、「誰でもいいから、学校の人を一人確保しなきゃ!」と慌てている。でも、休日でもあるし、都合よく同じ学校の人を見つけられるはずもない状況。
- そこでふと、メンバーの一人が(家のエプロン+制服姿の)主人公を見つけて、渡りに船と「これから選手権大会に参加するには、もう一人必要なの。協力して!」と主人公に依頼する。
- (拒絶) 突然のことに、主人公は混乱して、「できない。自分は料理については何も知らない」と思わず拒絶する。
- しかしメンバーから「立っているだけでいいから!」と泣きつかれてしまう。
- また、主人公が「配達も終わってしばらくは暇をもてあます状態だ」と伝えると、メンバーは強引に主人公を参加者として引きずり込む。
- あまりの強引さ(もしくは必死さ)に、主人公は拒絶しきれずに、渋々参加することになる。
- (メンター) 主人公が訳も分からずに会場に入ると、そこで驚くべき光景を目の当たりにする。会場中央のステージでは、参加者である女子高生たちが真剣にラーメンを作って戦っている。そんな戦う風景を、大勢の観衆が熱狂的に応援している。勝敗が決まると、出場者は泣いて喜んだり、真剣に泣いて悔しがっている。
- あまりの迫力と真剣さに、主人公は驚いてたじろぐ。
- メンバーによって、ここがどういう場なのかを説明される。
- ここは「全国女子高生ラーメン選手権」の会場で、出場者の女子高生たちがラーメンを作って戦っていること。また、「その場で発表されたテーマと食材を用いて、最もおいしいラーメンを作ったグループが勝者」というルールも説明される。
- (この世界では)ラーメンは大人気で、和食やフレンチで日本一を取るのと同じぐらい、この大会で優勝することは栄誉あることだとされる。そしてラーメンだからこそ、和食やフレンチのような伝統食にはない独創性やエンターテインメント性が生まれて、観客も熱狂的になれるのだと。
- ラーメン同好会の説明。
- 同好会のリーダーから、この同好会も、選手権での優勝を狙っていることを説明される。しかし人員が足りずに存続の危機で、助っ人の一人も突如参加できなくなってしまったこと。だから主人公に入ってもらったこと。
- 主人公の役割も説明。ここでは「立っているだけでいいから」、「食材を洗ったり、洗い物や雑用をするだけでもいいから」と示される。主人公は「その程度なら」と、乗り気でないながらも受け入れざるを得ない。
- 主人公たちのグループが戦う番になる。そしてテーマと食材が発表されて、メンバーたちは悩みながらも取りかかる。
- メンバーたちは「ひょっとすると」と思い、主人公に簡単な料理を依頼する。しかし主人公はそれすらできずに、メンバーたちから「完全に素人だ」と思われ、落胆される。
- そしてメンバーたちは、うまく仕上げられずに危機的状況に陥る。
- 主人公は落ち込みながらもその光景を見ていると、ふと気づいたことがあり、「この料理なら、この食材と、この調味料を使うといいですよ」と助言する。
- メンバーたちは「素人は黙っていて」と突き放すが、リーダーだけは「意外と理にかなっている」と感じて、主人公に「どうしてそう思ったの?」と問いかける。
- すると主人公は「実は自分の家は、食材と調味料の卸売りをしていて、私はそれを手伝っている。なので料亭がどんな食材をどんな調味料で作っているのか、全て把握している」と、事情を語る。
- リーダーやメンバーたちはその言葉に驚く。実際に試してみると効果的で、みんなが主人公の持つ才能に驚く。そして主人公は、リーダーやメンバーから「よく来てくれた」と感謝される。
- そしてメンバーたちは主人公の提案を全て取り入れて、圧倒的劣勢の中でも逆転する勝機を見いだしてゆく。
- 結果として困難を乗り越えて、主人公たちは逆転勝利を得る。メンバーは大喜びして「あなたのおかげよ!」と主人公を抱きしめる。観客も総立ちで、劇的な逆転勝利を演出した主人公たちに熱狂する。
- こうして主人公は、自分の才能に気づき、「こんな自分でも、大いに喜んでくれる人たちがいる」と強く感激することになる。
- (第一関門) ラーメン選手権で劇的勝利を飾った主人公は、メンバーたちから感謝されつつも、今までのように家を手伝う日常に戻る。
- 主人公は「あれは一時的なことだ。自分は家の手伝いをしなきゃいけない」と、あのときの興奮を忘れようとする。
- しかし、いつまで経ってもあのときの興奮や、メンバーたちから喜ばれたことが忘れられない。ふと気づくとラーメン同好会のことを考えてしまい、手伝いにも身が入らなくなり、悶々とした時間を過ごしてゆく。
- そんなとき、今度はラーメン同好会のメンバーたちから、主人公に対して正式に「この同好会に入ってくれないか」と依頼される。
- 「主人公にはメリットがないかもしれないが、どうしても君が必要なんだ」と、誠心誠意頭を下げられることになる。
- 主人公はメンバーに喜んでもらえたことを思い出し、「こんなにも自分が生き生きとできて、貢献できる場があって、熱中できることなんて、今までなかった」と思う。
- だが、主人公には家の手伝いがある。主人公は、「少し考えさせて欲しい」と答えを保留する。
- 悩みに悩んだ末、主人公は両親に改まって「高校のこの同好会で、みんなと一緒に活動したい。手伝いも夜にきちんとするから、許可して欲しい」と頭を下げる。
- すると両親は、微笑んで「今までよく頑張ってくれた。家は大丈夫だから、友達と大切な高校生活を楽しみなさい。むしろ、あなたに心から熱中できることができて、嬉しい」と、主人公の活動を応援する。
- 主人公はそんな両親に感謝して、ついに自らの意思で、ラーメン同好会へと入ることになる。
- (日常) 世界観の説明と、欠点を持つ主人公の日常。
- 第二幕前半:
- ラーメン同好会に入った主人公は、ここから新たな日々を始める。
- まずはメンバーの紹介をされて、同好会の目的を示す。目的は「全国女子高生ラーメン選手権での優勝」になる。
- ラーメン選手権の歴史やルール、システム、同好会の今までの経緯や全国ランキングなども、ここで説明しておく。
- 決勝で戦う、宿敵となるチームもここで紹介しておく。そのチームはもちろん全国ランク1位の常勝校になる。
- ここから主人公たちは、選手権で勝つために、いくつかの小目標を決めてそれに向かって訓練をしてゆく。
- 主人公は食材の組み合わせこそ知っているが、それだけでは全国区の選手権には通用しない。選手権で勝つには、他の能力も身につける必要がある。また、他のメンバーも、それぞれ克服すべき課題を持っている。
- ここから訓練や特訓と同時に、主人公は一人一人のメンバーとふれあうことで、一人一人の個性を知ってゆく。
- 以下は余裕があったときに使うネタ。
- (サブプロット1)「夏合宿」を通して、主人公たちは調理の基本を学ぶ。その過程を通して、仲間1の抱える問題を解決してあげて、仲間1と打ち解け合う。
- (サブプロット2)「食材調査の旅」を通して、主人公たちは食材への愛情を学ぶ。その過程を通して、仲間2の抱える問題を解決してあげて、仲間2と打ち解け合う。
- (サブプロット3)「一流料亭巡り」を通して、主人公たちは一流の味を知り、研究する。その過程を通して、仲間3の抱える問題を解決してあげて、仲間3と打ち解け合う。
- (サブプロット4)「夏祭りの屋台バトル」を通して、主人公たちは連携の準備をする。その過程を通して、仲間4の抱える問題を解決してあげて、仲間4と打ち解け合う。
- 第二幕後半:
- (ターニングポイント) 主人公が家の手伝いをできなくなったために、家の経営が傾き始める。両親は「大丈夫」と言うが、明らかに無理をしている状態になる。主人公は手伝えることがなく、家族に貢献できずに、さみしい思いをする。
- それによって、以下で戦いを経るごとに、「同好会はこの戦い限りにした方がいいんじゃないか」という思いを募らせてゆく。
- 「経営悪化の原因はただ一つ、知名度だ。知名度さえ取り戻せれば、経営は立て直せる。それ以外は全て十分にいい状態である」という、クライマックスで解決するための前振りをしておく。(読み手に解決方法の予測をさせたくない場合、第一幕の冒頭でこの前振りをするのもよい)
- ついに選手権の予選が始まる。主人公たちはそれぞれの戦いで危機的状況を迎えるが、第二幕前半で得た内容を元に、逆転勝利を飾ってゆく。
- 以下は、余裕があったときに使うネタ。
- (予選1):調理の基本を無視した、直感で作るタイプの敵と戦うことになる。敵チームは主人公たちの「凡人はちまちま味見をする」という、料理の基本に縛られる姿を馬鹿にする。戦いでも敵が有利なテーマと食材になり、主人公たちは危機的状況に陥る。しかし見た目と香り、味が食い違う調味料があることで、見た目や嗅覚だけで判断して味見をしなかったために、敵は自滅する。一方で主人公たちは基本を応用して食材の特性をつかみ、逆転勝利を収める。
- (予選2):食材への愛情を無視した、食材を無駄にするタイプの敵と戦うことになる。敵チームは主人公たちの「食材への感謝」を馬鹿にする。戦いでも敵が有利なテーマと食材になり、主人公たちは危機的状況に陥る。しかし「突発的な事故で、両チームの食材が半分以上使えなくなる」というトラブルがあることで、主人公たちが逆転勝利を収める。
- (予選3):一流の素材や作り方を無視して、ジャンク素材を多用する敵と戦うことになる。敵チームは主人公たちの「自然素材への敬意」を馬鹿にする。戦いでも敵が有利なテーマと食材になり、主人公たちは危機的状況に陥る。しかしジャンク調味料内で使われている元の自然素材を見抜き、一流料亭の技術を応用することで、ジャンク以上の深みを出して主人公たちが逆転勝利を収める。
- (予選4):連携を無視して、たった一人でラーメンを仕上げる敵と戦うことになる。敵は主人公たちを「無能者たちの連携」と馬鹿にする。戦いでも敵が有利なテーマと食材になり、主人公たちは危機的状況に陥る。しかし残り時間が少ない状態で、ある食材に問題があることが発覚し、短時間での作り直し勝負となる。「そういう作り直しは、選手権でもレストランなどの現場でもよくあることだ」とすることで、相手は自滅し、主人公たちが逆転勝利を収める。
- 決勝で戦う敵チームも登場する。
- (バトルを重視したい場合)敵チームは、去年に主人公が属する同好会を滅多斬りにして、見下したという因縁を持つ。さらに、主人公チームのリーダーと因縁がある、としてもよい。
- 今年も敵チームは主人公チームをさんざんにこき下ろして、しかもメンバーの一人を深く哀しませるような、傷つくことを言う。
- それによって主人公たちは、「絶対に負けたくない」と強く思うようになる。
- (さわやかな決勝にしたい場合)主人公たちのチームは、敵チームのメンバーたちから助けられる。そして互いに「旧知の仲で、ライバル」だとすることで、「お互いに全力を尽くそう」と誓い合う。この場合、敵チームのメンバーを第二幕前半から登場させて、主人公たちを助けてもよい。
- (最後の晩餐) ついに、決勝を間近に迎える。
- 決勝を前に、主人公たちは最後の休日を満喫する。この戦いが終わったら、三年生は引退することになるので、このメンバーで一緒にいられるのは次の試合が最後になる。
- また、主人公の家の経営も悪化していて、主人公自身も「この同好会で楽しめるのは、これが最後だ」と受け入れざるを得ない。
- それによって、主人公はみんなと一緒にいられる、最後の幸せを楽しんでゆく。
- そしてそれぞれが「最高の仲間たちだ」と受け入れることで、深く絆を結ぶ。
- ついに決戦当日が訪れる。主人公たちは連携を確認して、全国大会決勝の会場へと旅立つ。
- 開会式が行われて、主人公たちは最後まで選ばれたファイナリストとして登場する。選手入場の際に、観客に向けて、改めて一人一人の紹介がされる。
- そして決勝戦開始の宣言がされて、戦いの火ぶたが切って落とされる。
- (中盤の盛り上がり) 敵との戦いが始まる。決勝は今までとは違い、数回のラウンドに分けた、違うテーマと食材があるバトルになる。
- いくつかの逆転劇を繰り返すが、絶対に負けられない戦いを前にして、主人公は「母親が過労で倒れた。借金も相当な額に登り、大会に出ている場合ではない」という一報を受け取る。
- 動揺した主人公は何も考えられなくなり、重要なラウンドで敗北してしまう。
- 主人公は「自分のせいで、メンバーたちに不安をかけたくない」と、仲間たちに理由を言えない。それによって、仲間たちとかみ合わなくなり、すれ違い、連携や信頼を失ってゆく。
- 最終的に、仲間たちから「今の主人公なら、いない方がいい」とまで言われてしまい、主人公は泣きながら会場を飛び出してしまう。
- (報酬) すぐ近くの病院に向かった主人公は、病室で母親が点滴を打たれつつ、寝ているところを見る。
- そして、「あの同好会に入ったことが、全ての間違いだったんだ」、「母親が倒れたのは、全て私のせいだ」、「私は、高校生活を楽しむことなんかしちゃいけなかったんだ」と分かり、一人きりで、さめざめと泣く。
- 一方で仲間たちは、「主人公の母親が倒れた」、「主人公の家の経営が苦しい状態だった」と、主人公の事情を知る。それによって、仲間たちは主人公にきついことを言ってしまったことを後悔する。
- 第三幕:
- (帰路) 会場もしくは主催側のトラブルで、幸運にも決勝の最終ラウンド開始が延びることになる。それによって、主人公たちのチームは一時的な猶予を得る。
- 仲間たちは、「主人公を励まし、主人公の家を建て直す方法がある」と示す。そのためにも、知人に主人公の家まで向かわせたり、自分たちにできることをしてゆく。だけど、肝心の主人公が最終ラウンドまでに戻ってこなければ、その計画を実行に移せないというタイムリミットの設定。
- 仲間たちは助っ人を呼び寄せて、なんとか残りラウンドをしのいでゆく。
- ラウンドの合間に、仲間たちは主人公に電話をするが、主人公は拒絶して会場には戻らない。
- 仲間たちは戦いを抜けるわけにはいかないために、主人公が戻ってくるのを待つしかない。
- 主人公は電話を母親のベッドの横に置いたまま、病院の屋上へと逃げ出す。そして「みんなはどうしているだろう」と絶望に浸っている。
- (クライマックス) ついに最終ラウンドの直前を迎える。最終ラウンドを前に、メンバーたち出場者は、少し長めの休憩時間を得る。
- 主人公は「母親の意識が戻った」と伝えられて、病室に戻る。そこで主人公は「自分が全て悪かったの」と罪を語る。しかし母親はそれを否定して、「主人公が輝くことが、私たち両親の幸せ」と伝える。そして、倒れたのもちょっとした貧血だと伝える。
- また、「さっきお友達から電話があったの。いいお友達ね。だから会場に行きなさい」と優しく伝える。
- 同時に仲間たちが病室へと走って訪れて、「全部、電話で話したとおりです」と伝えて母親の許可を得る。母親も「この子をよろしくお願いします」と、仲間たちに託す。そして嫌がる主人公を、無理矢理会場へと連れて行く。
- 会場に連れ込まれた主人公は、仲間たちが全員、主人公の家のエプロンをつけていることに気づく。
- そして、「決勝の場で、主人公の家の宣伝をすればいいんだ。優勝すれば、なおさら知名度も高められて、経営も立て直せる。それに私たちもお礼に、主人公の家の手伝いをする」と伝えられる。
- 仲間たちは、「私たちはみんな大切な仲間だ。苦しいことも、頼ってくれていいんだ」、「一人ではできないことでも、みんなでならできることもある」と、主人公の苦しみを分かち合おうとする。
- 主人公は仲間たちからの愛情に涙を流して、今までの苦しかったこと、哀しかったこと、全部自分のせいだと思っていたこと、友達が欲しかったことを吐露する。
- それをみんなが受け入れることで、主人公は救われる。
- 結果として、本当の意味で団結した主人公たちは、最終ラウンドを見事に勝利を収めて、劇的な逆転優勝を手にする。
- (エンディング) 大会を終えた主人公は、以前と同じような日常に戻る。しかし一つだけ変わったことがある。それが、家が繁盛して、かけがえのない友人たちができたということ。
- 友人たちは「同好会の食材研究」と称して主人公の家で無償の手伝いをして、母親が退院するまで主人公の両親を支えたこと。また、一緒にラーメンを作ることで、家族ぐるみで楽しんだことなどの説明。
- 主人公は学校のクラスでも有名になり、クラスメイトと打ち解け合うことができるようになる。
- こうして全ての問題が解決して、「大会が終わっても、三年が引退しても、ずっと仲間だ」とラーメン同好会の活動を再開するところで、ハッピーエンド。
ちゃんとした流れにできてますよね。
たった4行の設定からでも、これぐらいは作れる、ということです。
プロット(構造)を作っても、キャラ設定に余裕を持たせるという技術
で、注意して見てもらいたいものが、ここまでプロットを突き詰めて作っているのに、未だにキャラクター設定がきわめて柔軟に設定できることです。
5人のメンバーがいますが、主人公以外はもう柔軟にキャラを作れます。
主人公に関しても、「まじめそうな性格」というくくりがあるにはありますが、それでもかなり柔軟にキャラ設定を作れます。
すなわち、私が作っているのは純粋に「ストーリー構造」だけで、このプロットを受け取った側は、キャラ設定を自由に作ることができます。
だいたい、プロットのように「目に見えないもの」が苦手な人は、キャラクター設定のように「目に見えるもの」を得意とします。
ほら、「ストーリーはどうでもいいけど、キャラ設定を考えるのだけは大好き」みたいなタイプの人がいるでしょ。
まさにそれです。
そういう場合、私は構造だけを提供して、相手がキャラ設定を柔軟に決められる方がいいですよね。
すると、相手は大好きなキャラ設定を、念入りに作り込むことができます。
「ここまでプロットを決めているのに、キャラ設定がここまで柔軟にできる」というのは、なかなか気づかないけれども、実は結構すごいことだったりします。
まとめ
今回の内容は、「どういう切り口で王道プロットに当てはめるか」という部分が一番の決め手になっています。
「無能者が英雄になる」を使える、という部分が決め手ですね。
こういう「王道プロットの使い方」が分かれば、たった4行というごくわずかな情報からでも、メインプロットを構成できます。
これは、すごい可能性だと分かりますよね。
「ストーリー作家のネタ帳」シリーズは、使い道次第で大きな武器になるので、是非おすすめです。
あれは辞典と同じなので、自分なりにいい使い方を見いだしていただければ、大いに役立てられるかと思います。
ってことで、今日は「たった4行の設定から、メインプロットを作る流れ」というお話でした。
今日はここまで~。