なんだかメインプロット再構成例が地味に人気なようなので、今日もそれをやってみましょう。

今日は、前回紹介した「黒幕を作る」という方法で、物語「涼宮ハルヒの憂鬱」のメインプロットを再構成してみましょう

今回は、トリックを含むミステリー作品を作る実演としても、参考になるかなと思います。

 

「黒幕を作る」で、物語を解決に導くことができる

前回紹介した「黒幕を作る」という方法は本当に優秀で、解決への駆け引きが作れなかった場合でも、強引に解決へと導くことができるようになります。

これは駆け引きを重視するバトルものだけでなく、特にミステリーやサスペンスと相性がいいと分かります。

ミステリーって、黒幕(仕掛け人や犯人)がメインになりますからね。

 

ちなみに黒幕の存在は、必ず冒頭か第一幕メンターまでの段階で前振りをしておかなければなりません。

で、ミステリーの場合は、第一幕メンターの段階で「こういう謎の人物がいる」と示すことで、前振りができます

例えば「正体は分からないけれども、犯人がいる」とか、「誰かは分からないけれども、事件を仕組んだ人がいる」と示しておくわけです。

すると、物語後半で黒幕を登場させたとしても、読み手は違和感なく受け入れられます。

もしこの前振りができていなければ、「ご都合主義だ」と言われることになって、「ご都合主義とハッピーエンドのジレンマ」に陥るわけですね。

 

「涼宮ハルヒの憂鬱」を再構成する

じゃあ実際に、今回もこの「黒幕を作る」の具体例を通して、メインプロットを再構成してみましょう。

今回使う物語は、谷川流著のライトノベル「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズです。

ライトノベルではかなり売れた部類の作品なので、ご存じの方も多いかと思います。

 

物語の内容はというと、現代の学園もので、恋愛要素を持ちつつも、フィクションが入ったミステリー、という感じでしょうか。

主人公であるキョンは、高校に通うことになった普通の青年です。

主人公はやっかいごとを嫌う性格ですが、刺激のない生活にうんざりして、冒険することに内心あこがれています。

そんな主人公が、高校入学時の新たなクラスで、涼宮ハルヒという恋人役の少女と出会います。

その少女は刺激的な冒険が大好きで、いろんな問題を引き起こすことで、主人公を冒険の旅へと巻き込んでゆきます。

それによって主人公は、その少女と恋をしつつ、互いが抱える問題を解決していく……という流れにしたかったんだろうと思います。

 

この作品を読んだことがある方なら分かると思いますが、この作品は途中から急にトーンダウンして、物語の途中(第二幕前半まで進んだ状態)で休刊中です。

いろいろ問題を含んでいるんですが、これを今回説明した「黒幕を作る」ことでメインプロットを復元して、解決に導いてみましょう。

 

注:以下では谷川流著「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズのネタバレと、プロット修正案が含まれます。楽しみを大きく損なう可能性があるため、谷川先生のファンであったり、涼宮ハルヒシリーズを楽しみにしている方は、以下は閲覧しないようにお願いします

あと、私はこのシリーズでは「涼宮ハルヒの動揺」まで見てます。それ以降は見ていない上に、結構忘れているので、本編との食い違いがあるかもしれないことをご了承ください。

 

黒幕を設定することで、物語を構成してゆく流れ

この作品はミステリーで、主人公は様々な事件に巻き込まれていくことになります。

まあ、様々な事件のように見えて、最終的には一本の事件に収束していくことになるんですが。

 

で、実際にこの作品における、黒幕を決めてゆきましょう。

この作品では第一幕メンターの段階で、主人公は「自分の周囲には未来人、超能力者、宇宙人がいる。それは既に仲間としている。だけどあと一人、異世界人がいる」と、黒幕の存在を前振りをしています。

この「誰かは分からないが、自分の周囲には異世界人がいる」というのが黒幕の前振りになります。

 

で、先述したように、こんな風に黒幕の存在を前振りしておきさえすれば、この黒幕は誰を設定してもOKです。

ただし、ここで誰を黒幕にするかで、全体が大きく左右されます。

今回は、仲間の一人である女子生徒(長門有希)を黒幕に設定することにしましょう。

なぜこのキャラを黒幕に選んだのかというと、ただ単純に私の好みだからです(笑

 

なら、大まかには次のような流れにできると分かります。

  • 第一幕: 主人公が、「少女(涼宮ハルヒ)のもたらした事件」を解決することを決意する。
  • 第二幕前半: 敵である「少女がもたらした事件」を解決してゆく。
  • 第二幕後半: 敵のボス(に見せかけた相手)と戦い勝利する。だが、さらに黒幕がいることが判明する。
  • 第三幕: 主人公が黒幕の正体へと挑み、黒幕が女子生徒であることと、そのトリックや動機を明かして、根源的な事件を解決する。

 

前回説明したエヴァンゲリオンの流れと、同じ構成ですよね。

ただし、ミステリー形式なので、黒幕の正体は最後まで隠す形になっています。

そして「敵を倒す」に該当するのが、ミステリーでは「黒幕の正体と、事件の全体像を明かす」ことになります。

 

トリックと動機を作る

で、ミステリーなので、トリックと動機を作っておきましょう。

このトリックと動機で、いろいろと物語の形が変わることになります。

 

ちなみにこの作品では恋人役になる人物が二人いて、少女(涼宮ハルヒ)と女子生徒(長門有希)がどちらも恋人役になりえます。

むしろ、本来の恋人役である少女よりも、女子生徒の方が、恋人役としてふさわしいポジションにいるんですよね。

主人公がどちらと結ばれるのかは、どちらでもかまいません。

主人公と結ばれない方を、「叶うべきではない夢」と演出することで、うまくまとめられます。

 

ただ、それだと本当に再構成することになって、いくらでもメインプロットは作れます。

なので今回は、休刊している現状からでも物語をうまく結末に導けるように、また、少女派と女子生徒派の双方を満足できるように、解決策を提案してみましょう。

 

それが、「少女と女子生徒は同一人物だった」という設定(トリック)を加えることですね。

異世界創造のファンタジーOKな世界観なので、これを利用してうまくまとめてみましょう。

 

動機を元に、トリックを作る

そのために、まずは黒幕である女子生徒の動機を考えてみます。

なぜ黒幕の女子生徒は、「少女がもたらす事件」を引き起こし、主人公を巻き込ませたのかを考えます。

なら、「女子生徒は主人公が好きだったから」と、「主人公の好みのタイプを知りたかったから」でいいでしょう。

女子生徒は過去に主人公から助けられて、主人公に恋心を持つようになったとします。

こんな風にシンプルなほど、強い動機になります。

 

で、トリックとそのバックストーリーを作っておきましょう。

ストーリー作家のネタ帳 第4巻」の「謎を持つ事件に巻き込まれる」でも触れましたが、トリックとは言うなれば「回りくどい実現方法」だと言えます。

主人公に恋心を持っている女子生徒(名前は涼宮ハルヒ、外見は少女、性格は女子生徒の女の子)は、自分の「地味で本好きで控えめな性格」にコンプレックスを持っていたとしましょう。

また、主人公の「冒険にあこがれる」という欲求も知っていたとします。

で、女子生徒は「きっと私みたいに地味な性格でなくて、積極的で、冒険を作り出せる性格の方が好きなんじゃないか」と思ったとしましょう。

 

そんなとき、女子生徒は魔法か何かで「異世界を作る力」を得たとします。

そして女子生徒は、入学した高校で、片思いをしている主人公と同じクラスになると判明します。

そこで女子生徒は、主人公の好みのタイプを知るために、異世界を作って主人公の好みを探るわけですね。

そこでは、「地味で本好きでおとなしい涼宮ハルヒ」ではなく、「派手で活発で冒険好きな涼宮ハルヒ」がいる世界になります。

で、自分自身は姿を変えて、「長門有希」という仮の名前をつけて、女子生徒として主人公の様子をそばから見守り、必要に応じて助ける……という形にします。

 

こういう「女子生徒と少女は同一人物だった」という設定を加えることで、無事に現状からでも解決できるかと思います。

この回りくどい実現方法が、トリックになります。

主人公は、物語中でこのトリックへのヒントを得ていくことになります。

 

メインプロットを再構成する

じゃあ実際に、メインプロットを再構成してみましょう。

ここでは、上記の内容と、「ストーリー作家のネタ帳」第4巻の「謎を持つ事件に巻き込まれる」「敵の巣窟に入る」を元にすれば、以下のメインプロットは作れます。

あと、第2巻の「幻想の幸せに逃げる」も部分的に用いています。

 

  • 第一幕:
    • (日常) 欠点を持つ主人公の日常。
      • 世界観は現代学園もの。主人公は高校に入学することになった青年。
      • 主人公はやっかいごとを嫌う性格で、刺激のない退屈な生活にうんざりつつも、冒険にあこがれている。だけど自分から冒険をする勇気が得られずに、「人生ってそんなもんだ」と言い訳をしながら生きている状態を示す。
    • (冒険への誘い) 入学後のクラスで、涼宮ハルヒという名の少女と出会う。少女は奇抜で突拍子もない性格で、問題ややっかいごとを次々と作り出すことで有名。だが、その性格のために孤立している状態になる。
    • 主人公は少女と席が前後だったために、気まぐれで少女にいろいろ話しかけると、なぜか少女から気に入られてしまう。そして、少女は勝手に「この世の超常現象に触れて冒険をするサークル」を創設して、主人公を引きずり込む。他にも、少女は面白そうな人材をサークル員として引き込む。
    • (拒絶) やっかいごとが嫌な主人公は、当然そんな面倒なサークル活動を嫌がり、入ることを拒絶する。
    • (メンター) ここでメンターとなる別のサークル員から、主人公が置かれた状況を示される。少女は無意識でこの現実世界を書き換えることができること。実際に少女の気まぐれで、超能力者や未来人、宇宙人、異世界人が作られて、こうしてサークル員として集まっていること。
    • ただし、「異世界人」が誰なのかは、分からない。(黒幕の前振り)
    • 黒幕である女子生徒も、ここでサークルの一員(宇宙人役)として登場する。少女と同種の「現実世界を書き換える能力」を持つが、「上からの命令で、勝手に書き換えることはできない」と、力の発動に制約を持っていると示す。
    • もし少女が退屈をすると、この世界が冒険的で脅威あふれる世界に書き換えられてしまい、大混乱してしまう。こうして、「世界平和のために、少女を退屈にさせないようにしなければならない」と物語の目的が示される。
    • 当然ここでの主人公は、そんな突拍子もないことを信じることができずに、拒絶したままでいる。実際にいくつか超常的な脅威が主人公を襲い、女子生徒やサークル員によって助けられるが、それでも信じようとはしない。
    • (第一関門) 主人公が少女の相手をしないことで、少女が退屈をしてしまう。それによって、主人公と少女の二人は異世界に取り込まれてしまう。少女はそれを自分が引き起こしているとは知らずに、完全に無自覚な状態になる。
    • 主人公は少女を助けながらも、窮地に追い込まれてゆく。そしてサークルの一員である女子生徒から、「少女とキスをして。なら、ひとまず解決できる」と(都合よく)メッセージが残されていることに気づく。主人公が意を決してキスをすることで、少女は退屈から解放されて、二人は異世界から解放され、気づくと元の世界に戻っている。
    • 結果として、主人公は「少女を退屈させると、世界も自分も危うくなる」と認めざるを得なくなる。
    • また、主人公は少女から少なからず好意を持たれていることに気づく。こうして主人公は逃げきれなくなり、覚悟を決めて、自らの意思で「少女が退屈すると、世界が滅びる」という事件の解決に向けて、動き始める。
  • 第二幕前半:
    • 少女の冒険に付き合わされる、新たな日々が始まる。少女は退屈をすると、「こうなれば面白いのにな」と妄想するクセを持っている。そしてその神のような「現実を書き換える力」を無意識に使い、妄想を現実にしてゆく。主人公は少女のその妄想を止めることもできないし、少女本人も自分がそんな力を持つとは信じない。
    • そのため、どんどん超常現象が起こり、主人公は少女と共に窮地に立たされてゆく。そのたびごとに、主人公はヒーローとして少女を助けざるを得なくなり、窮地を乗り越えてゆく。
    • 同時に、主人公は仲間である女子生徒から、危機的状況を助けてもらう。女子生徒と力を合わせることで、女子生徒と絆を深めてゆく。主人公は女子生徒のことも好きになるし、女子生徒は無表情ながらも、主人公に恋心を寄せているように感じられてゆく。
    • ここでは、主人公は防戦一方になる。そんな中で、主人公はトリックのヒントを得てゆく。そのヒントとなる情報を、カモフラージュをしつつ読み手に示してゆく。
      • 女子生徒と主人公は、以前に図書館で出会っていること。そして女子生徒は主人公に助けられ、主人公に恋心を寄せるシチュエーションができていたこと。
      • 女子生徒は、少女のことをよく知っていること。少女の部屋に上がると本がたくさんあり、まるで女子生徒のような性格の子がそこに住んでいるかのようになっていること。一方で女子生徒の部屋は、がらんとしていて生活感がなく、元々そんな人間はそこには存在していないようになっていること。
      • 少女の母親の旧姓が「長門」だったり、飼っている犬の名前が「ユキ」だったりすること。(それが女子生徒の名前の由来になっている)
    • 主人公は謎の組織に襲われてゆくが、それは女子生徒と同じような「世界を書き換える能力」を使っていると分かってゆく。そして主人公は、その敵のボスを倒せば、この一連の事件を解決できるのではないかと推測してゆく。
    • 第三幕の前振りとして、ここで女子生徒から「絶対に入ってはいけない場所」があると示される。「主人公がそこに入ると、私(女子生徒)は死ぬ」と脅されて、主人公は気になりつつも、踏み込まないでいる。
  • 第二幕後半:
    • (ターニングポイント) 少女に振り回されつつも、様々な情報を得た主人公は、ここから事件全体像の仮説を立てて、検証してゆく。(ミステリーなので、以下で触れる仮説の内容は、読み手には示さない)
    • その仮説とは、「女子生徒が黒幕となる『異世界人』で、彼女がこの非現実的な世界を作り出した張本人である」ということ。そして主人公は、「自分が少女にこう接したら、世界はこう書き換えられるはずだ」とか、「自分が女子生徒にこう接したら、少女や世界はこういう反応を引き起こす」と予測して、行動を起こしてゆく。そして実際に、それが的中してゆく。
    • また、敵である「謎の組織」の設定も矛盾していたり、当てつけな設定だと判明してゆく。そこから「謎の組織」なんてものは実際には存在せずに、都合よく女子生徒が脅威を作っているだけなのだと分かってゆく。そうして、本当の黒幕は女子生徒なのだと検証してゆく。(ただし読み手には、別の人物が黒幕であるかのようにミスリードをさせる)
    • だが主人公は、なぜわざわざ女子生徒がそのようなことをしているのか、動機が分からない。主人公は少女よりも女子生徒の方が性格的に好きなのに、女子生徒はかたくなに「主人公は少女と結ばれる方がいい」という態度を取り続ける。
    • 主人公たちは「謎の組織」から追い詰められてゆき、次第に逃げ場がなくなってゆく。
    • (最後の晩餐) ついに、主人公たちは「謎の組織」との決戦を前にして、最後の晩餐を楽しむ。それは同時に、主人公が仮説の検証をする前日を意味する。
    • 敵からの脅威を排除するには、自分の仮説を検証する必要がある。しかしそれをすると、今までの関係は少なからず壊れてしまうことが分かる。そのため主人公はここで、思い残したことを全て済ませておく。また、少女や女子生徒と、今までの関係でいられる最後の時間を楽しむ。
    • (中盤の盛り上がり) そして仮説を検証する時が訪れる。最終決戦が始まり、いくつかの逆転劇を経て、主人公は女子生徒の力を借りて、「謎の組織」の裏をかくことに成功する。
    • 主人公は決定的な証拠を持たず、そして動機が判明しない状態であるが、いくつかの状況証拠から「謎の組織」の黒幕が女子生徒であると推論を示す。すなわち、女子生徒が主人公や少女に脅威を与えていた黒幕「異世界人」であると。
    • 女子生徒は驚くほど素直にそれを受け入れる。そして「自分が諸悪の根源だ」、「ただの遊びで主人公を殺そうとしていた」と、いかにも悪の権化のように態度を豹変させ、主人公たちを攻撃し始める。
    • 主人公はここまでで用意されていた力(女子生徒から与えられた力)を用いて、少女を守り、女子生徒の攻撃を退けてゆく。その矛盾をうすうす感じつつも、結果として女子生徒を「異世界」に封印することで、勝利を収める。
    • (報酬) 少女は主人公に抱きつき、「好き」と告白をする。悪役となった女子生徒は、異世界へと封じられる直前に、涙を流して微笑みながら、「これでよかったの」、「主人公、少女を大切にしてあげて」とつぶやく。
    • そんな、まるで自己犠牲をするかのような女子生徒の姿を見て、主人公は自分の仮説に大きな過ちがあったことに気づく。そして、事件の全貌がここでようやく分かる。(読み手にはまだ、この全貌は示さない)
    • しかし、主人公が想いを寄せつつ、頼りにしていた女子生徒は、この世界から消えてしまう。仲間も「目的は果たした」と伝えて主人公の前から消えて、主人公は少女と二人きりになる。
    • 主人公は少女と二人きりになり、「絵に描いたような最高の幸せ」という「作られた世界」がお膳立てされていることを前に、自分が間違ったことをしたと分かり、絶望する。
  • 第三幕:
    • (帰路) ここで主人公は、女子生徒を取り戻すまでに一時的な猶予があると知る。女子生徒を助けたい主人公は、第二幕前半で示された「絶対に入ってはいけない場所」を思い出し、そこに立ち入る。すると、そこには「ここは異世界で、現実は別の世界である」という決定的な証拠が残されている。(もしくは、ばらばらになった仲間たちを集めるヒントが残されている)
    • 全てを理解した主人公は、ここから種明かしへと動いてゆく。そのために、ばらばらになった仲間たちを探し出し、集めてゆく。その過程で、部分的な種明かしを解説してゆく。
    • ここでは少女がそれを止めようとする敵になる。少女は「主人公がこの状態を気に入らない」と感じ始めて、イライラし始める。それによって無意識に「世界を書き換える力」を使い、主人公に対して脅威をもたらす。同時に、世界を崩壊へと導いてゆく。
    • 主人公は少女の脅威をなんとか退けつつ、仲間たちを集めてゆく。
    • (クライマックス) ついに、主人公は全ての仲間を集めることができる。そして、息も絶え絶えな女子生徒も見つけることができる。だけど、少女のイライラは絶頂に達して、世界は終わりを告げようとしている。
    • 世界が崩壊してゆく中で、主人公はこの事件の全貌を示す。「この事件の黒幕は『涼宮ハルヒという名の女子生徒』で、異世界人は……いや、この異世界に取り込まれた人は、俺(主人公)と女子生徒だ」と語る。
    • ここから、トリックと動機の解説。主人公は過去に図書館で、ある「女の子」を助けたことがあると、最近思い出したことを語る。それは「涼宮ハルヒ」という名の女の子で、顔は可愛いけど、性格は地味で本好きでおとなしいこと。そしてそのときに、主人公は女の子と他愛もない会話をして、「こういう冒険話が好きなの?」とか「俺(主人公)も、こういう冒険にあこがれるな。でもそういう性格じゃないからな」とやりとりしたことを語る。
    • そこからその「女の子」は、「主人公に好かれるには、冒険好きで主人公を積極的に引っ張れる性格じゃないといけない」と思い込むようになったこと。
    • そんなとき、女の子は偶然、魔法のような「異世界を作り出す力」を得たこと。そしてその女の子は、高校で主人公と同じクラスになっていると知る。そこで主人公を幸せにしたいがために、そして自分の恋心を満たしたいがために、劣等感から「活発な性格の涼宮ハルヒが、主人公を冒険に誘い、恋をしてゆく世界」を作り出して、主人公をその異世界に引き込んだこと。
    • でも、それだと女の子は主人公のそばにいられないので、「地味で本好きでおとなしい女子生徒」に姿を変えて、主人公をそばから守る役に徹したこと。
    • 「だから、女子生徒は無理矢理主人公と少女を結びつけようとしていたんだ」と主人公が語る。
    • 女子生徒は感情的に「違う!」と言うが、そこで主人公が決定的な証拠として、「図書館で借りた本」を出す。それが、「絶対に入っては行けない場所」で得たものであり、「地味でおとなしい涼宮ハルヒ」との思い出の品なんだと。
    • 決定的な証拠を前に、女子生徒は崩れ落ちて、自分が全ての黒幕だと明かす。主人公は、「もし少女のような顔をした子で、女子生徒のような性格の子がいたら、俺は確実にそいつを好きになる」と伝える。それによって、女子生徒は「現実に戻す」と受け入れて、この「異世界の物語」を消去する。
    • (エンディング) 「女子生徒が作った異世界」から「現実世界」へと戻ってきた主人公は、冒頭と同じような場面を繰り返す。主人公は、異世界での記憶を忘れたかのように振る舞っている。
    • 入学式を終えてクラスに入ると、すぐ後ろの席には「地味でおとなしい性格の女の子、涼宮ハルヒ」がいる。主人公は、その子がその性格のために、孤立していることを知る。
    • 主人公がその子に「以前、会ったことあるよな?」と話しかけて、女の子も勇気を出して主人公と話すところで、新たな毎日を予感させてスタッフロールへ。
    • (蛇足)後は、エピローグで「実は主人公は、異世界での記憶を持ち続けていた」と示す。そして、「自分が女の子(地味でおとなしい涼宮ハルヒ)を、冒険へと連れ出そう」と決意して、改めて告白をするなりキスをするなりして、ハッピーエンド。

 

黒幕次第で、流れは千変万化する

……とりあえず、こんなメインプロットを作ってみました。

ミステリーは説明が長くなるので、分量も多めになりました。

第二幕後半の展開は、推論が正しい場合と間違っている場合の二通りの作り方があるんですが、今回は推論が間違っている流れを採用しています。(詳しくはネタ帳4巻「謎を持つ事件に巻き込まれる」に書いてます)

 

これは前回のエヴァンゲリオンの例とは違って、黒幕を誰に設定するか、動機をどうするかで千変万化します。

しかも、黒幕は誰を当てはめてもいいので、それによって形はだいぶ変わります。

なので、作者の谷川先生がこの形をイメージしているとは限りません。

あくまで、私好みの「二次創作」ということで見るといいでしょう。

 

この「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズで筆が止まってしまった要因として、「恋人役の少女(涼宮ハルヒ)を主人公の敵にしてしまった」ということがあります。

主人公は少女がもたらす事件に巻き込まれるわけですが、表面的な敵が少女自身になってしまうわけですね。

すると、少女が(たとえ本人が無意識でも)主人公に脅威を与える形になり、恋人役として立たせることができなくなってしまいます。

むしろ主人公を守る仲間キャラ(長門有希)の方が、恋人役に近い立ち位置になってしまっています。

 

そういう「恋人役と恋ができない」というジレンマが、物語を進行させることができなくなる要因となって、休刊になったと言えるでしょう。

今回の私のメインプロットでは、「恋人役の涼宮ハルヒと、仲間の長門有希を同一人物にする」というトリックと黒幕を加えることで、強引に解決をしています。

強引ですが、ちゃんとした物語になってますよね。

 

まとめ

「黒幕を作る」というのは、こういう矛盾した物語でも、解決に導くことができるわけです。

特にこういうミステリー作品では、黒幕の存在を第一幕メンターまでの段階で前振りできていれば、後々復帰できます。

 

だから、「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズも、まだまだ物語として復活、完結させることができます。

メガヒットも納得できるほど、設定や世界観は素晴らしいので、今後の展開を楽しみにしたいところです。

 

ということで、今日は「黒幕を作る」という方法で、物語「涼宮ハルヒの憂鬱」を解決に導いてみました。

今日はここまで~。

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