今日は珍しく、社会のお話です。

封建主義、自由主義、社会主義、ベーシックインカム(最低保障付き自由主義)を、私なりに分かりやすく説明してみることにしましょう。

今日はかなりの長文(普段の2倍ぐらいの分量)なので、時間があるときにでもどうぞ。

 

封建主義って何? 自由主義って何?

自由主義とか社会主義とか、いろいろ世の中にあるじゃないですか。

「封建主義は古そうだから、ダメなんじゃないか」とか、「社会主義って発展しそうにないし、なんか気がついたら独裁になっているよね」とか、いろいろありますよね。

私自身、ずっと違いがよく分からなかったんですよ。

アバウトに、「私ならベーシックインカムがあったら最高なのにな」とか、「社会主義って、中国やロシア、東ドイツの統制体制をイメージして、怖そう」みたいなイメージがあったりして。

 

でも、最近分かったのが、こういうのは社会のスタイルであって、「どれがいい悪い」ではないということですね。

それぞれに長所があるし、欠点もある、ということです。

 

なので今日は、そういう「封建主義って何? 自由主義って何?」みたいな、「社会のスタイル」を、私なりに説明してみようかと思います。

これは個人の性質とまったく同じなので、自分を個性を理解すると同時に、社会を理解できるようになるかと思います。

すると、よりうまく社会を理解できるかなと思います。

 

内向型と外向型を作る、4つのタイプ

前著「高共感な人の生き方戦略」で説明しましたが、私自身は人の性質には次のような、2つの主な軸があると思っています。

一つは、「社会維持をするのが向いているか、それとも新境地開拓をするのが向いているか」という性質。

もう一つは、「共感性が高い(弱者を助けることが好き)か、低い(強者側になることが好き)か」という性質です。

 

で、この軸に従うと、人には次のような4つの性格タイプがある、としています。

  • 外向型:変化を嫌い、伝統に従い、社会維持をするのが得意なタイプ。競争をして強者になることを好み、社会を動かすことや、主張を好む。(一般的に言う、外向型の人)
  • 境地開拓タイプ(革命タイプ):好奇心や自分軸が強く、合理性を好み、改善や改革を重視するタイプ。社会を動かすことや、主張を好む。(スティーブ・ジョブズやイーロン・マスク、織田信長とか、堀江貴文氏のような、革命家タイプ)
  • 高共感タイプ(弱者救済タイプ):あまり主張をせず、弱者への思いやりを持ち、「弱い人を助けたい」と思うタイプ。全体を強く動かすことにはさほど興味はなく、社会で弱い個を助けることを好む。(マザー・テレサのような、優しいタイプ)
  • HSPタイプ(自由重視弱者救済タイプ):あまり主張をせず、弱者への思いやりを持つが、同時に強い自分軸や好奇心も併せ持つタイプ。社会にさほど興味がなく、その上で弱い個を助けることを好む。(スナフキンやブラック・ジャックのような、社会から距離を取りつつ優しいタイプ)

この分類について詳しく知りたい方は、こちらの記事(内向型の違いが分かりやすくなる、内向型の3つのタイプ)をご覧ください。

 

4つのタイプを図で示すとこうなる

この4つのタイプを2つの軸で示すと、次図のような関係になります。

 

世の中には、こういう4つのタイプの人がいる、ということですね。

 

タイプ別で、統治スタイルに違いが出る

で、もしそれぞれのタイプが国や会社を統治をするとなると、個性が出ます

「人に優しくしたい」と思う高共感タイプ(弱者救済タイプ)の人は、弱い人や社員でも助けようとします。

逆に外向型の人は、「我慢して競争しろ。打ち勝て。そうして初めて、勝利を得られる」と言って、弱者は切り捨てて、強者を優遇して、我慢や競争を重視することでしょう。

 

そういう「もし自分の個性で統治するなら、こうする」という統治スタイルを示すと、各タイプの性格からして、次のようになりやすいと分かります。

 

  • 外向型:封建主義(独裁)的な統治をしやすい。
  • 境地開拓タイプ(革命タイプ):自由主義的な統治をしやすい。
  • 高共感タイプ(弱者救済タイプ):社会主義的な統治をしやすい。
  • HSPタイプ(自由重視弱者救済タイプ):ベーシックインカムのような、「最低保障付き自由主義」的な統治をしやすい。

 

なお、これはあくまで「自分が自由に国や会社を統治できるならば、どう統治しやすいか」という次元の話です。

「どういう社会システムに属したいか」とか、「どういう社会システムを支持・応援しているか」、「どういう制度や政党に投票したいか」という意味ではないことにしましょう。

あくまで、「自分がトップになって、自由にできるなら、こうしやすい」という側面に限定したお話です。

 

そして、この関係が分かると、社会や国家のシステムが分かりやすくなるかと思います。

 

各タイプが統治をすると、こうなりやすい

外向型が統治をすると、封建主義的な独裁になりやすいものです。

それは、外向型な人ほど、弱者への思いやりは持たずに、なおかつ斬新なこともしにくいからです。

だから、今までの方法論に従って、自分を支持する身内や味方を優遇して、自分の血筋や家族、思想系統が持続するように、きっちりとした強めの支配体制を組みます。

今の中国や韓国、ロシア、内戦続きのアフリカ諸国がこんな感じです。

 

境地開拓タイプ(革命タイプ)が統治をすると、自由主義的な統治になりやすいでしょう。

これは、境地開拓タイプほど自由が好きなので、あんまり他者を縛りたくないし、縛られたくもないと。

そして、それぞれが比較的自由に行動することで、それぞれがいろんな新境地を発展させて、豊かになれます。

だから、政府はあまり民間を縛らずに、自由にさせて協力していこうよ、というスタイルです。

伝統的なアメリカとか、ヨーロッパでも北欧諸国、オランダやデンマークがこういうスタイルですね。

 

高共感タイプ(弱者救済タイプ)が統治をすると、社会主義的な統治になりやすいでしょう。

これは、「できるだけ弱者を助けたい」と思うことで、弱者をなくすことを重視します。

ただ、新しいことをするのは不得意だし、興味もないので、従来の方法論に従って、「強者は弱者に分かち合うようにしようよ」という強めの支配体制を組みます。

そういう「新しいことはできないけど、分かち合いを重視しよう」というのが社会主義的なスタイルです。

 

最後に、HSPタイプ(自由重視弱者救済タイプ)が統治をすると、「最低保障付き自由主義」とも呼べる形になりやすいでしょう。

これは、「自由が好きだけど、弱者も助けたい」ということで、「全員にはシンプルに、最低限の保障をしましょうよ」というスタイルです。

だから、こういうスタイルだと、ベーシックインカムのような「みんなに一律で、最低限のお金を配りましょうよ。それ以外は各自が自由にしましょうよ」という発想になると。

 

で、この性質が分かると、それぞれのシステムが理解しやすくなるかと思います。

 

なぜ社会主義は、世代を経るほど独裁になるのか

例えば、世の中では、「社会主義って、最初の理念はいいのに、世代を経るほど独裁になる」という性質がありますよね。

実際に中国や北朝鮮、ロシアとかを見ても、今では弱者救済どころか、階級とか貧富の差を作っていて、独裁をしているじゃないですか。

 

それは、そもそも政治は低共感な人たち(図で言う下側の人たち:外向型と境地開拓タイプ)が好み、主張を通して行うものだからですね。

言うなれば、高共感な人(図で言う上側の人たち:高共感タイプとHSPタイプ)は、あまり全体や政治には興味ないんですよ。

その上、地位に固執することもないし、「みんなが望むなら、やってみよう」程度でしかないので、結構早くその地位を手放しがちです。

むしろ、「困っている個人個人を助けたい」と、全体よりも個に着目して、個を助けようとするタイプです。

 

一方で、低共感な人(図で言う下側の人たち:外向型と境地開拓タイプ)ほど、地位や社会への影響力を求めるし、執着もします。

すると、高共感タイプ(弱者救済タイプ)が統治して弱者救済システムを作っても、その後継者はたいていが低共感な人なので、すぐに封建主義的な独裁になると。

すなわち、上図で言う上側の社会システムは、世代を経るごとに、下に移行しやすいわけです。

 

だから、社会主義は世代を経ることに封建主義になると。

そしてきっと、ベーシックインカムのような「最低保障付き自由主義」も、自由主義に戻りやすいでしょう。

それは、政治は低共感な人が好んで行うから、図で言う下側のスタイル(封建主義か、自由主義か)に落ち着きやすいからですね。

 

封建主義(独裁)が強い時期、自由主義が強い時期

で、封建主義(独裁)か、自由主義かというものも、時代に応じて強い時期と弱い時期があります

私たちは「封建主義(独裁)はダメだ」とか思いがちですが、そういう封建主義の方が全体では効果的なこともあると。

 

例えば今のようなコロナウイルスのパンデミックがある時期では、自由主義はとても弱くなり、逆に封建主義が強くなりがちです。

それは、自由だと「新たな発展」は効果的にできても、「脅威への団結」はしにくいからです。

 

例えば大勢の人がいる社会に、1匹の腹を空かせたライオンが入り込んだとしましょうか。

ライオンは人を襲って、一人ずつ食べていきます。

ここで、みんなが自由を重視していると、「みんなで団結して、ライオンを倒そう」とはなりにくくて、「どう自分なりに工夫をして、対処して生き残るか」を先に考えます。

だから全体で大きな団結ができずに、その間にどんどん人が食われてしまい、なかなかライオンに対処しきれないと。

 

一方で、封建的な方が、こういう問題へは対処しやすくなります。

国王が貧民を集めて兵隊にして、「お前ら戦って、ライオンを殺せ」と命令できます。

すると、貧民にとっては地獄ですが、ライオンを早めに処理できるので、全体(というか、強者側や富裕層)の利益は守られます。

ある意味で、封建主義というのは、そういう「犠牲となる人を強引にでも決定できることで、全体(特に強者側や富裕層)が守られる」という世界だとも言えるでしょう。

なので、トータルで見ると、封建主義の方が損失を抑えられて、うまくいきやすいと。

 

「自由」は成長に強くても、外敵に弱い

このライオンを、今のコロナウイルスと置き換えると、分かりやすいでしょう。

実際に、自由を重視するアメリカやヨーロッパが弱くなって、今は封建的な中国の一人勝ちですよね。

それは、強烈で絶対的な指揮体系があるから、敵を押さえ込むことができるからでしょう。

 

だから自由というのは、成長には強くても、そういう外敵を前にすると弱々しいものです。

自由というのは、アイデアや効果的な方法を探し出すのに優れているので、経済発展はしやすいものです。

でも、独自性を重要視するということは、裏を返すと「希薄なつながり」だとも言えるでしょう。

だから、団結する力がなくて、混乱が続いてしまうと。

 

日本は弱者救済を重視する

実は日本は伝統的に、どちらかというと社会主義的な、弱者救済を重視する価値観を持っています

いや、もちろん日本だけでなく、どの国も外向型の人が最大勢力だし、日本でも外向型が統治するようなブラック企業は山ほどありますが。

それでも、日本は世界と比べると、「思いやりを持って、弱者を助けることが、素晴らしいことだ」という基本的な価値観が強いように思います。

 

それはきっと、聖徳太子の「和をもって尊しとなす」という精神に象徴されるように、「みんなで仲良くしようよ」という傾向が強いんじゃないかと思います。

実際に、例えば日本では、家族でも一番下の子を基準に「おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん」と、家族の人々を呼びますよね。

それは、家族の中でも一番弱い子の目線に合わせて、年長者がいろいろ配慮していることになります。

「お兄ちゃん(お姉ちゃん)だから我慢しなさい」という、よく考えると意味不明な論理が通じてしまうのも同じです。

 

それは、「強者は我慢をして、弱者を守る方が大切だ」という、弱者救済を重視しているからですね。

また、「日本人は主張ができない」とか、思いやりを重視する日本の各種サービスとかも、「配慮や思いやりを重視する」ということで、世界の中でもより高共感なことを重視していると言えます。

 

そして、日本人は「個人よりも全体」を重視しがちです。

例えば今回のコロナウイルスでも、日本では「自粛をしましょう」という呼びかけだけで、整然と自粛をしたじゃないですか。

欧米では、法律で縛らないとできないことが、日本ではそういう呼びかけだけで実現できているわけです。

すなわち、日本人は世界から見ても、「個人よりも、社会全体の秩序を重視する」ということになります。

だから、日本は制度的には自由主義側ですが、性質的には社会主義的なところが大きいと言えると。

 

日本ではなぜベーシックインカムに逆風が強いのか

で、こういう性質が分かると、日本でベーシックインカムの問題も見えてきます。

日本では、なんかやたらとベーシックインカムに対して「問題だ」と逆風があるじゃないですか。

それは、ベーシックインカムは自由を重視して、「弱者であるほど救済される」ということを重視していないからだろうと思います。

 

一応解説しておくと、ベーシックインカムとは「国民全員に、一律で最低限生きられる程度のお金を配ろうよ」という発想です。

ただ、これは自由主義を併せ持つので、常に「それ以外の保障制度は、全部なしにする」ということを前提としています

すなわち、「制度を思い切ってシンプルにする」ということが必要になると。

 

すると、今まで助けられていた弱者にとっては、ベーシックインカムに移行すると、逆に苦しくなります。

というのも、例えば何らかの障害を持つ人とか、特定の病を持つ人、妊婦とか子供、老人とかは、今までは各種保障制度をいろいろ使えていました。

それが一気になくなって、ベーシックインカムだけになるので、そういう「社会で弱者な人」ほど、得られるお金の量は減ってしまうわけですね。

だから、「弱者が守られなくなる」ということで、反発が多いんだと。

 

「それは本当に障害や問題なのか?」

一方で、自由主義的な考え方をすると、「弱者」への考え方をもっと自由にとらえることになります。

そもそも「自由を重視する」というのは、「ハンディキャップを背負っていることも、それをどう認識して、どう扱うかも、自由である」という思想があるわけです。

 

ある意味、「それは本当に障害や問題なのですか?」ということですね。

以前、「色覚異常は異常ではない」という仮説が面白かった、というお話でもしましたが、色覚異常は「個性」なのか、「異常」なのか、というお話です。

すると、色覚異常では確かに色の判別はできませんが、輪郭や明るさをとらえる能力は高い傾向にあります。

なら、「認識できる色数をあえて制限することで、動くものを効果的に認識できる、そういう進化だったんだ」と分かります。

 

他にも、例えば独特な個性を持っていたり、麻痺を持っていたり、身体をうまく動かせなかったり、毒となる親に育てられたかもしれません。

「でも、そんな欠点に見える性質も、長所にできるんじゃないか。それは強みになるんじゃないか」

「他の人のようにできなかったり、不具合を持つからといって、それが不幸だとは言えないんじゃないか。その人なりに、自分なりの幸せを求めて生きられるんじゃないか」

根底には、そういう思想があるわけです。

言うなれば、「幸せとは何か」という哲学部分ですね。

 

そういう場合、何が障害で、何が長所なのか、分からなくなります。

「後は、自分の工夫次第で豊かになれるよ」という世界です。

「強い個性を持っていて社会に適応できなくても、その個性を発揮して新商品や新サービスを作って、売ることもできる」という発想ですね。

それが、自由主義で重視する考え方です。

 

自由主義は、工夫ができる人に有利な環境

そんな中で重要なのが、社会にいる多くの人は、工夫ができないタイプの人だということです。

特に日本人は、自由を重視しないので、欧米の人に比べても工夫ができない傾向があるように思います。

そういう工夫ができない人は、周囲と同じようにするしか生きられないので、どうしても社会に属するしかできなくなって。

だから、「その問題は、工夫次第で長所にできるかもしれないよ」と言われても、多くの人が拒絶してしまうわけです。

 

これが、日本ではベーシックインカムが否定的にとらえられる原因のように思います。

ベーシックインカムの根底には、「弱者は助けるけど、自分の問題の規模に応じて、自分で工夫しなきゃいけない」という工夫重視のスタイルがあるからです。

ある意味、「多くの人が工夫を苦手としているから、ベーシックインカムを拒絶している」、ということです。

他の言い方をすると、自由主義は「工夫ができる人に有利な環境」で、封建主義や社会主義は「我慢ができる人に有利な環境」だと言えるかもしれません。

 

日本は、工夫よりも我慢を重視している社会である、ということですね。

一方で、欧米のような、我慢よりも工夫を重視する方が、ベーシックインカムを実現しやすいように感じます。

 

まとめ

そんな風に、封建主義、自由主義、社会主義、最低保障付き自由主義をとらえると、世の中が分かりやすくなるかと思います。

それは、人の性格によって生まれたもので、状況に応じて有利不利が変わる、ということですね。

 

それで、今のような時期は、封建的なスタイルが力を持ちます。

一方で、自由主義は力を落とします。

なので、中国が勝ちやすいし、アメリカも今回の選挙で弱者救済を重視して、大きな政府になりつつあり、自由よりも弱者救済に動き始めたと。

そう考えると、世の中が分かりやすくなるかと思います。

 

ただ、このコロナウイルスが終わって、その後の金融的な混乱も乗り越えれば、私の中ではやはりアメリカの方が成長するかと思っています。

それは、今のアメリカが弱者救済を目指すようになったとはいえ、それでも自由を重視する国だからですね。

新たな発展は、自由な場で、工夫をする人によって作られるものです。

不自由な場では、まねをすることはできても、発展は作りにくいと。

なので、5~10年ぐらいの期間では中国の方が強いでしょうが、コロナウイルスが収まって、10年以上の期間で考えると、アメリカが伸びるかと思います。

 

そしてこういうことが分かったら、世の中の動きも分かりやすくなるかなと思います。

 

ということで今日は、封建主義、自由主義、社会主義、ベーシックインカム(最低保障付き自由主義)を、私なりに分かりやすく説明してみた、というお話でした。

今日はここまで~。

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